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ネットゼロカーボン社会を目指して新設された INPEXの水素・CCUS事業開発室とは?

IINPEXは、エネルギーの安定供給をミッションとして掲げるエネルギー開発企業です。最近では、地熱や風力などの再生可能エネルギー事業をはじめ、水素・CCUS事業も展開しています。

今回は、そんなINPEXの仕事や働き方を知るため、社員の方に気になる疑問をインタビューしてきました! 早速、INPEXの水素・CCUS事業について解説していきます。エネルギー問題に関心がある理系女子の方は、ぜひ参考にしてみてください。

INPEXについての詳しい会社説明

  エネルギーの未来に応えるリーディングカンパニー!INPEXの事業や仕事内容を徹底解説 「エネルギーに新しい風」 をテーマに、国内・海外でエネルギー資源の開発・供給を担うINPEXは、グローバルな環境で働くチャンスに恵まれた企業です。最近では再生可能エネルギーの分野にも取り組み、さらなる躍進が期待されています。今回はINPEXの事業や具体的な仕事内容などを紹介します。 理系女子のWEBメディアRIKEJOCAFE


目次[非表示]

  1. 1.INPEXが掲げる3つの気候変動対応目標とは?
    1. 1.1.目標1.「2050年 絶対量ネットゼロ」
    2. 1.2.目標2.「2030年 原単位30%以上低減」
    3. 1.3.目標3.「Scope3の低減」
  2. 2.2021年に新設!「水素・CCUS事業開発室」の取り組みは?
    1. 2.1.取り組み1.CO2の低減
    2. 2.2.取り組み2.水素事業(1)
    3. 2.3.取り組み3.アンモニア事業
  3. 3.「2050年ネットゼロカーボン社会実現」に向け社を挙げて取り組む
    1. 3.1.水素・CCUS事業開発室の設立理由や目的についてお聞かせください
    2. 3.2.現時点での技術的な課題は何でしょうか。
    3. 3.3.コストのお話がでたのですが、このように環境問題に関する取り組みでは利益が出るのでしょうか?反対に赤字にはならないのでしょうか?


INPEXが掲げる3つの気候変動対応目標とは?



INPEXは、「2050ネットゼロカーボン社会」の実現に向けて積極的に貢献し、エネルギー構造の変革に取り組んでいる段階です。それにともない、世間に対するコミットメントとして、3つの気候変動対応目標を定めました。


目標1.「2050年 絶対量ネットゼロ」

INPEXでは、石油天然ガス開発で生じる二酸化炭素を減らしていきます。対象は「Scope1+2」です。「Scope1」は報告企業が所有または管理する発生源からの直接排出量をさし、「Scope2」は報告企業が購入・消費する電力、蒸気、熱および冷却からの間接排出量を意味します。

目標2.「2030年 原単位30%以上低減」

「原単位30%以上低減」では、原油1バーレルを生産する際に排出される二酸化炭素量を2019年の量と比べて、2030年時点で30%以上低減する目標を掲げています。「2050年 絶対量ネットゼロ」と同様に対象は「Scope1+2」です。

目標3.「Scope3の低減」

「Scope3の低減」は非常にチャレンジングな課題です。「Scope3」は、販売した石油・天然ガスを使う消費者から排出される二酸化炭素量をさします。社会全体の課題であり、全てのステークホルダーと協調し、取り組みを進めていかなければなりません。たとえば、関係者がカーボンニュートラルLNGなど、低炭素化認証のついたエネルギーを必要とすれば、INPEXも積極的に対応します。同時に天然ガスを水素やアンモニアに転換することで「Scope3」の排出を減らす計画です。



2021年に新設!「水素・CCUS事業開発室」の取り組みは?


INPEXでは、エネルギーの安定供給と同時に、ネットゼロカーボン社会の実現に向けて、さまざまな事業に取り組んでいます。


その点、2021年に新設された「水素・CCUS事業開発室」では、上流事業のCCUSの推進をはじめとしたCO2低減、クリーン水素・アンモニア事業を展開しています。それぞれの取り組みを詳しく確認していきましょう!


取り組み1.CO2の低減


CCUSは、「Carbon dioxide Capture Utilization and Storage」の略称であり、回収した二酸化炭素を地下に貯留したり、石油・天然ガスの増産および燃料や化学品の原料として利用することで固定化する技術です。


この技術は、比較的古く知られています。たとえば、CO2EORです。EORは、Enhanced Oil Recoveryの略称であり、石油増進回収法と呼ばれています。二酸化炭素を石油がある油層に圧入して油層の圧力を高めることで石油の生産量増大に利用します。

INPEXでは80年代後半から取り組んでいる技術であり、石油回収率の向上に役立っています。過去にいくつか実証試験を実施し、技術も蓄積してきました。


INPEXは新潟県に保有する南阿賀油田において、CO2EORの実証試験を計画しています。CO2を水と混ぜてフォーム(泡状)にしてから地下の油層に入れると、より効率的に油が取れます。このように新しい技術の開発も行われています。


また、INPEXはオーストラリアのダーウィンのプラントでLNGを作っていますが、ここでも二酸化炭素が排出されている状況です。ダーウィンで生じた二酸化炭素を回収して、近傍の地層に圧入する計画にも取り組んでいます。


取り組み2.水素事業(1)


水素事業に関しては、INPEXは新潟県柏崎市で「水素製造・利用一貫実証プロジェクト構想」を推進しています。


INPEX保有の南長岡ガス田から生産される天然ガスの一部を水素に変える取り組みです。生成された水素は、発電という形で利用したり、自動車向け燃料として販売したりするなどして、利用の幅を広げていきます。


天然ガス由来の水素は、生成過程で二酸化炭素が排出されますが、二酸化炭素を回収して地下のガス田に戻せば大気に放出されることはなく、さらにガス田の圧力上昇によるガスの生産量増加も期待できます。


発生したガスをもう一度水素製造ラインに戻してあげて、二酸化炭素を排出しない形で水素を製造します。いわゆるブルー水素です。そういったプロジェクトにも取り組んでいます。


取り組み3.アンモニア事業


海外でもさまざまな事業に取り組んでいます。たとえば、アブダビにおけるクリーン・アンモニア事業です。天然ガスからアンモニアを作りますが、アンモニアの用途にポイントがあります。


石炭の発電所において、アンモニアの混焼について、各電力会社が実証試験を始めています。将来的にクリーンなアンモニアをエネルギー源として使えれば、二酸化炭素の排出量が減ります。


アブダビで天然ガスからアンモニアを製造するときも、やはり二酸化炭素の発生は避けられません。回収したCO2をアブダビの油田にCO2EORという形で活用することによって、油の増産とクリーンなアンモニアの製造を進めています。




ここからは、INPEXの水素・CCUS事業についてより詳しく、水素・CCUS事業開発室で働くエンジニアにインタビューした内容をお伝えします。


「2050年ネットゼロカーボン社会実現」に向け社を挙げて取り組む


水素・CCUS事業開発室の設立理由や目的についてお聞かせください

INPEXの大きな使命はエネルギーの安定供給です。それに加えて2050年ネットゼロカーボン社会の実現にも貢献していきます。

CCUSという技術は、我々がこれまで石油開発事業において取り組んできた技術であり、二酸化炭素排出量削減に役立つ技術です。

CCUSの「U」はutilizationのことです。なんらかの手段でCO2を有効に活用するという総称です。

例えば二酸化炭素を油層に圧入し、油をより多く取れるように役立てます。地下に二酸化炭素を戻すと、油層の圧力が上がり石油がより多く生産できる様になると同時に、二酸化炭素を地下に貯留できるため温室効果ガスの削減に繋がります。この様な形で、二酸化炭素を有効に活用します。また、CO2を水素と反応させて、メタンに戻す取り組みも行っています。

CO2EORなどのCCUSは、実証試験やメイン事業である石油・ガス開発事業を通して得た知見を活用できる分野であり、INPEXの強みです。さらに天然ガスの処理や、LNGプラントの設計・建設・運転に関する知見もあります。

水素やアンモニアの製造についても、これまでの石油天然ガス開発で培ってきた経験を活用できます。CCUS技術と水素・アンモニア製造を組み合わせると、二酸化炭素を排出しない天然ガスを原料としたエネルギーを製造可能です。つまり、クリーンなエネルギー供給を実現できます。

日本政府が掲げた「2050年ネットゼロカーボン社会実現」は、INPEXの目標でもあります。そのため、CCUS・水素事業を一層強化する必要があり、新しい部署が設立されました。


現時点での技術的な課題は何でしょうか。

アンモニア製造で使われる水素は、ほとんどが天然ガスから作られているのが現状です。

基本的に昔から天然ガスから水素を作る技術は存在していました。また、製造過程で発生したCO2を分離・回収する技術も存在していました。

ただ、エネルギーとして水素を使うときに、LNGあるいは天然ガスのまま供給していた資源を水素に変え、発生したCO2を分離・回収してさらに圧入するとなれば、追加の設備が必要です。

つまり課題はコストであり、従来確立されている技術をベースに、低コスト・高効率で水素を作る、あるいはCO2を回収する必要があります。


究極の目的は、エネルギーのクリーン化と経済性の両立であり、今後も、技術面・制度面からコストを下げる取り組みを続けていく必要があります



コストのお話がでたのですが、このように環境問題に関する取り組みでは利益が出るのでしょうか?反対に赤字にはならないのでしょうか?


INPEXの収益としては、今のところ大半は石油天然ガスで賄っています。つまり、石油天然ガス事業で収益を確保したうえで、将来の再生可能エネルギー、水素・アンモニア事業、低炭素化事業に先行投資しているというイメージです。

たしかに、CCUSではCO2を地下に圧入する設備を設置するのに莫大なお金がかかります。しかし、社会的要請に応えるためにも、気候変動対策に貢献する必要があり、収益とのバランスを取りつつ積極的に取り組んでいる状況です。


将来的に、天然ガス由来の水素やアンモニアを製造する時代の到来が予測されています。我々も水素・アンモニア製造という当社にとって新しい分野の事業において、技術力を蓄えていかなければなりません。

そのため国内の現場で実証試験を実施し技術開発や技術力の強化を図りながら、将来の大型プロジェクトにつなげていきたいと考えています。実証試験や技術開発においては、研究機関や大学等とも連携して取り組む事が多いです。


日本は国内でエネルギーがあまり取れません。そのため、海外で比較的安価に水素やアンモニアを作り、日本に運んでくる事が必要になると予想されています。

INPEXは、既存事業を通してオーストラリアやインドネシア、アブダビ等において事業基盤を有しており、また、政府機関や国営石油会社と良好な関係を構築しています。これらの国・地域において石油・天然ガスの開発事業に加え、水素・アンモニア等の新たな事業も展開していきたいと考えています。



未知の分野でエンジニアや研究者として活躍できるフィールドがあることはとても魅力的ですね。次回はお二人がINPEXに入社を決めた理由ややりがいについてお聞きします。

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