ティーチングアシスタント(TA)を実際にやってみた、その仕事内容とは?理系大学院生編
理系学生の中には「ティーチングアシスタント(TA)」につついて何となく聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
中には、教授からやってみないかと声をかけられた学生さんもいることでしょう。そこでこの記事では、実際にティーチングアシスタントを経験した筆者がその内容や実態について説明したいと思います。
目次[非表示]
- 1.ティーチングアシスタント(TA)とは
- 2.ティーチングアシスタント(TA)の仕事内容
- 2.1.実験補佐
- 3.コロナ禍でどう変わった?対面とオンラインでの仕事内容
- 3.1.対面(通常)での仕事内容
- 3.2.オンラインでの仕事内容
- 4.ティーチングアシスタント(TA)の勤務時間とお給料について
- 5.ティーチングアシスタント(TA)になるにはどうすればよい?
- 6.ティーチングアシスタント(TA)をやっていてよかったこと
- 6.1.効率的にお金を稼げる
- 6.2.自分の研究に活かす
- 6.3.研究室で堂々とアルバイトすることができる
- 7.ティーチングアシスタント(TA)をやっていて困ったこと
- 8.こういう人にはおすすめ
ティーチングアシスタント(TA)とは
主に修士課程や博士課程の学生が、学部生の授業の補佐をするお仕事です。
授業の補佐といっても、学生実験や演習など、座学の講義ではなく、学生が主体的に参加を求められる授業の補佐というケースがほとんどです。
では実際にどんな仕事をするのか具体的に説明します。
ティーチングアシスタント(TA)の仕事内容
実験補佐
授業の一環である学生実験は、数人のグループで実験を行い、レポートを作成、提出するのが一般的です。助教や准教授が実験の原理や目的、実験方法を説明し、実際に実験をする際にはTAがその補佐をします。
化学系やバイオ系の学生実験では、高校では使用しなかったような装置を用いて実験をしたり、より正確な操作が求められたりします。溶液を図り取る際に用いるピペットは、より精度の高いものを使用し、1 µL単位で測り取る作業もあります。1 µLは1 mLの1000分の1のスケールなので、正確な作業が求められます。しかし正確な量を測る正しい方法が分からないまま実験を進めてしまうと、失敗し、初めからやり直しとなることもあります。
これでは、実験の時間が伸びてしまうので、できるだけ円滑に実験を進められるよう、サポートするのがTAのお仕事です。
コロナ禍でどう変わった?対面とオンラインでの仕事内容
対面(通常)での仕事内容
対面は実験室に出向き、お仕事をします。キャンパス内での移動になるため、移動時間はあまりかからないので、大学生・大学院生にとって他のアルバイトと比べて好都合です。
ある日のスケジュールがこちら
12:30~13:00 出勤、事前準備
13:00~16:00 出席確認、適宜実験補佐(呼ばれたらヘルプで駆ける。学生の実験の様子を見ながらアドバイスをする。)
16:00~16:30 後片付け、退勤
実験の進捗状況によっては早く終わることもあり、16時前に終わることが多かったです。
実験によっては、TAが代表で装置を操作し、その様子を見せるというパターンもありました。対面実験の場合は一つの実験テーマにつき、TAが2~3人程度勤務することがおおいです。
オンラインでの仕事内容
オンラインTAは自宅で勤務できるので、さらに負担がかかりません。
12:30~13:00 出勤、Google Meetもしくはzoom立ち上げ
13:00~13:10 出席確認、先生の実験説明
13:10~14:40 オンデマンド映像を画面共有で流し、解説をはさみながら説明
14:40~16:00 質問対応
16:00 退勤
質問対応については、常に質問対応しているという忙しさではなく、あったら答えるというスタイルのため、パソコンで研究のデータ整理をしながら待機するというスタイルをとっていました。
時には質問数0の日もありました。そのため、オンラインTAは基本的に一人で行います。オンラインは、対面と違い受講している学生の反応が見えず理解度が分からないことや、質問対応の際に図解で説明するのが困難といったデメリットがあります。しかし、TAのお仕事としては対面よりも圧倒的に楽でした。
ティーチングアシスタント(TA)の勤務時間とお給料について
では、ティーチングアシスタント(TA)ではどのくらい稼げるのでしょうか。
勤務時間
実際の勤務時間の1.5倍程度の勤務時間としてお給料に反映されることが多いです。これは、事前準備の時間が加算されているためです。筆者の場合、実労働時間はおおよそ3~4時間程度ですが、お給料としては6時間勤務の扱いでした。
学生実験はおよそ3時間程度に設定されていることが多いです。TAは事前準備として、実験器具の設置やその日の流れの確認、資料配布などがあるため30分前に出勤します。
実験終了後も後片付けで30分ほど作業してから終了となります。実労働時間は4時間程度ですが、事前に実験の内容の理解等に時間がかかるということで、+αの時間が勤務時間に反映されます。
時給
学年によりますが、1000~1300円程度です。実際の勤務時間の1.5倍程度の給料が出ること、常に指導しているわけではないことを考慮すると好条件です。
ティーチングアシスタント(TA)になるにはどうすればよい?
応募時期
長期休みの間が多いです。
学生実験の授業が始まる時には、TAとして働ける状態になっている必要があるため、早めに募集がかかります。
実際に採用されたら、予備実験を行います。学生に指導する前に、自分たちも一度同じ実験をして簡単なレポートを作成し、それをもとに学生に指導することになります。これはオンラインTAの場合も同様です。
また、給料振り込みの口座登録に関する種々の書類を作成し、提出します。
面接
面接は基本的にありません。学内で募集するため、書類で条件を満たしているかの確認のみされることが多いです。
倍率
人気な実験TAは倍率が高く、専攻が考慮される場合がありますが、一般的に第一希望で採用されます。研究や就職活動で忙しい大学院生が多く、TAを希望する学生自体が多くないため、倍率は高くありません。
服装
自由です。対面実験に関しては、動きやすく、万が一の際怪我をしにくいように肌の露出を控えた服装が推奨されています。
そのため、ジーンズにパーカー、スニーカーというラフな服装のTAが大半を占めます。オンラインの場合は完全に自由です。
ティーチングアシスタント(TA)をやっていてよかったこと
効率的にお金を稼げる
理系の大学院生は忙しく、アルバイトをする時間を確保するのが困難です。その点、学内でできるTAは効率的にお金を稼ぐことができます。また時給1000~1300円という金額は、地方の大学にとっては高時給でありとても魅力的です。
自分の研究に活かす
学部生に向けて説明する必要があるため、実験の理解・資料の読み込みが必要不可欠です。そのおかげで、その分野に詳しくなり自身の研究に活かせることもあります。お金を稼ぎながら、自身も賢くなれるので一石二鳥です。
研究室で堂々とアルバイトすることができる
コロナウイルス感染拡大の今、人との接触低減を求めて学生のアルバイトに制限をかけている大学もあります。しかし実験TAは、対面の場合でも感染対策を万全にして大学側が行っていますし、オンラインは感染予防の観点から推奨されています。
安全なアルバイトをしているというアピールになり、研究室でアルバイトに対する理解をしてもらいやすいです。
ティーチングアシスタント(TA)をやっていて困ったこと
楽しいことばかりではありません、困ったこともありました。
平等に接することが難しい時があること
積極的に手を挙げてTAを呼んでくれる学生がいる一方、一人で考え込んでしまう学生もいます。実験が難しく色々な班から呼ばれてしまうと、全体に目を配るのが難しくなり、取り残されている学生を出してしまいます。
一部の学生にかかりっきりになると不平等感が生まれてしまうため、すべての学生に平等に接することを心掛ける必要がありました。
うまく説明が伝わらない(オンラインTA)
オンライン実験では録画した実験動画に解説を入れながら進めますが、学生は実際に実験をできていないため、実験のイメージがつきにくく理解が進まない場面がありました。
ただ動画を見るという受動の姿勢で受講することがないよう、途中でグラフや図を書くワークをいれたり、リアクション機能で反応してもらったりして、伝えられるよう努力していました。
こういう人にはおすすめ
このようにティーチングアシスタント(TA)は勉強をする必要があったり、大変なこともありますが、効率的にお金を稼ぎたい理系大学院生にはおすすめです。
また、その経験は就活のESや面接の時に語るエピソードとしても効果的です。自分の成長にもなり、研究にも活かせることができます。また一部のTAは学部生でも募集している場合もあるので、院生だけではなく学部生も募集状況などをチェクしてみるのもよいでしょう。