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女性国家公務員に聞いた理系の専門性や知識を活かす国家公務員の仕事とは!? 農林水産省・警察庁・特許庁

 国家公務員には、理系が活躍できる様々なフィールドがあります。

 農林水産省・警察庁・特許庁で働く理系出身女性国家公務員に、理系女子学生がインタビューし、仕事内容や国家公務員を目指したきっかけについてお話を伺いました。


農林水産省 食の安全を守る技術系国家公務員の仕事

現在、どのような仕事をしていますか。

 農林水産省消費・安全局食品安全政策課微生物管理班に所属し、食品中に含まれる有害微生物等の生産段階における安全性向上対策を検討、推進しています。

 主に牡蠣中のノロウイルスを担当しています。国内の牡蠣に含まれるノロウイルスの保有状況調査や牡蠣中のノロウイルス低減方法の検討を行っています。


農林水産省に入省したきっかけは何ですか。

 もともと環境問題や食に興味があったので、将来はその分野の仕事に就きたいと考えていました。

 国家公務員になると、広く様々な視点から食に関わることができると考え、農林水産省に入省しました。


実際に入省して気がついたこと、仕事のやりがいなどは何ですか。

 明確にこれがやりたいという気持ちよりも、入省時は食の安全に関する仕事がしたいという漠然とした考えでした。食の安全と一口に言っても、実際に働き始めると様々な部署が関わっていることに驚きました。

 食の安全の一端に関わる仕事をしている実感が持てるので、やりがいを感じています。


理系出身であることや学生時代の勉強が今の仕事にどのように役立っていますか。

 食の安全に関係する仕事は、非常に専門的な知識が求められると感じています。そのため、その分野の知識が身に付くまでは分からないことが多くあります。学生時代に学んだ分野とは異なる分野の仕事をしていますが、分からなくても学生時代に聞いたことがある用語が出てくると取り掛かりやすいので、学生時代の勉強は無駄ではないと感じます。また、知識が身に付いてくると、自分が出来る仕事の範囲が広がり、成長している実感を持つことができます。


国家公務員試験について、どのように対策していましたか。

 試験対策を始めたのは大学3年生の冬からです。周りと比べると勉強を始めたのは比較的遅かったと思います。筆記試験の対策に重点を置いて勉強しました。専門科目の過去問は大学の先輩からもらい、教養科目は大学の図書館の過去問題集で勉強していました。


どのようなスキルを学生のうちに取得しておくと良いと思いますか。

 日頃の業務では、情報収集がとても重要です。国内だけではなく海外の情報を収集することも必要なので、英語の勉強をしておくと役に立つと思います。


女性として働きやすい職場環境ですか。

 職場には女性職員が多く、幼い子どもを抱える職員も多数おりますが、フレックス制度などを活用しながら、仕事と家庭、育児を両立し、柔軟に働いています。

 また、ご質問からは逸れますが、農林水産省では様々なキャリアプランを積むことができます。例えば、大学院に通い修士や博士号を取得する職員もいますし、海外に留学する職員もいます。学生時代だけではなく、入省後も学び続けることができる環境が開かれているのも魅力だと思います。


学生に伝えたい仕事の魅力は何ですか。

 「食」に関して様々な観点から携わることができる点が、農林水産省の魅力だと思います。食の安全だけではなく、環境や和食等の食文化、輸出の促進、生産振興等のような現場に近い観点など、様々な角度から「食」にアプローチできます。



警察庁 治安維持に貢献する技術系国家公務員の仕事


学生時代には何を学んでいましたか。

 物理化学を専攻していました。


現在どのような仕事をしていますか。

 私は警察庁技官として、中国四国管区警察局の愛媛県情報通信部機動通信課に所属し、主に2つの業務を担当しています。


 1つは通信指令システムや電子交換機システムなど、警察活動に必要不可欠な情報通信システムの保全及び管理です。警察では突発事案の発生も珍しくありません。いかなる時でも、現場の警察官がスムーズに各種通信機器や情報システムを活用できるように、日頃の点検を行っています。日々の警察業務を支えることが私たちの仕事になります。


 もう1つは「機動警察通信隊」としての活動です。「機動警察通信隊」は、現場の警察活動の基盤となる通信を確保するため、様々な活動を行う部隊です。具体的には、災害又は事故が発生した場合、警衛・警護警備や雑踏警備等を実施する場合、犯罪の捜査を行う場合などに、警察本部と現場警察官との間の指揮命令や連絡等が円滑に行われるよう、臨時の通信施設の設置や現場映像の撮影・伝送等の情報通信対策を講じています。現場で撮影した映像は、首相官邸にリアルタイムで送られることもあります。


保全・管理を行うのは、ハードウェアとソフトウェアのどちらですか。また、保全の範囲は全国でしょうか。

 ハード面とソフト面の両方です。警察の情報通信システムは全国一体的に整備・運用する必要があるため、全国の都道府県には、国の機関としてそれぞれ情報通信部が設置されています。私は愛媛県情報通信部に所属しているので、愛媛県内の各種情報通信システムの保全業務を担当しています。他の地域については、それぞれの都道府県に配置されている警察庁技官が担当します。


警察庁に入庁したきっかけは何ですか。

 就職するにあたって何十年後かの未来の自分を想像した時に、やりがいを感じて働き続けられる職に就きたいと思いました。そこで「自分がやりたいことは何だろう。」と考えた時に、社会の治安維持に関わるような仕事をしたいと思い、警察庁を志望しました。


治安維持に関わるような仕事に興味を持ったきっかけは何ですか。

 国内の観光名所を旅行した時、外国からの観光客の多さに驚き、外国の方は日本の何に魅力を感じているのだろうと疑問に思い、調べたことです。日本の衛生面が良いからという声もありましたが、一番多かったのは治安が良いという意見でした。その時に、日本の治安は世界に誇れるものなのだと気が付きました。このことがきっかけで、治安維持に関わる仕事がしたいと思うようになりました。


実際に入庁して知った職場の魅力は何ですか。

 警察の情報通信システムは日進月歩で、常に新しい技術が入ってきます。警察で何か新しいシステムを整備するとなると、全国規模になり、必ず私たち警察庁技官が関わります。常に新しいことに触れ続けることができ、毎日刺激がある楽しい職場だと感じています。

 また、警察庁本庁での勤務や他府省庁、都道府県警察へ警察官として数年間出向することも可能です。多様な活躍のフィールドがあるため、研鑽を積み、知見を広げる機会も十分にあります。そういった面でも、幅広い業務に携わることができる点がとても魅力的です。


国家公務員試験について、どのように対策していましたか。

 公務員試験の勉強を始めたのは大学2年生の終わりでした。大学の公務員講座に参加し教養の共通科目をカバーしました。専門科目の化学は、普段大学で学んでいる範囲から出題されるので、大学の先輩に過去問をもらったり、市販されている教材を解いたりしていました。


どのようなスキルや資質が必要だと思いますか。

 システムのソフト面やハード面の保全・管理の他に、無線関係の機器を扱うことが多くあります。そのため、「第一級陸上無線技術士」などの資格を有している職員も多く活躍しています。このような資格は入庁してから取得する機会が十分にあります。

 警察の情報通信システムは一般的に世の中に出ていないものですので、皆さんが知らなくて当然ですし、入庁してから研修で学びます。入庁後、まもなくすると警察大学校附属警察情報通信学校に入校し、約3か月の研修を通して情報通信技術や警察の情報通信システムの扱いなどの知識を身に付けることができますので、今、情報通信技術やシステムなどに関する知識が何もなくても安心してください。


女性として働きやすい職場環境ですか。

 周りの女性職員を見ていると、結婚や育児などを考慮してもらえる職場という印象があり、職員からも「働きやすい職場だ」という声をよく聞きます。さらに、性別を問わず、育児休業の取得もかなり推奨されています。


特許庁 新しい技術・発明を守る特許審査官の仕事


現在どのような仕事をしていますか。

 特許庁審査第三部無機化学に所属し、特許審査官として無機化学における特許の審査を行っています。

 特許審査官の仕事は、企業・大学などから出願された発明の内容を理解し、同じようなものがあるかどうかを調べ、特許性の判断を行う仕事になります。


特許の審査はチームで行うのでしょうか。

 基本的には1人で担当することになります。もちろん他の審査官と相談することは推奨されていますが、最終的には1人で判断し、審査官の名前も公表されます。とても責任の大きい仕事です。

 とはいえ、入庁してすぐに審査官として1人で判断を行うわけではなく、入庁して2年から4年(期間は学部卒、修士卒、博士卒で異なる)は審査官補という扱いになり、指導審査官がマンツーマンで指導してくれます。一人前になるまでは、指導審査官と審査官補の2人体制で審査を行うという形です。特許審査官になると、基本的には1人で審査を行うことになるため、どんどん周りの人に話しかけ、積極的に相談することが重要だと思います。


先行発明があるのか、どのように調べるのでしょうか。

 基本的には世の中にあるものは全て調べます。化学系の場合、特許文献や論文を調べることが多いです。工学系ですと製品カタログも見ますし、食品系ですとインターネットに公開されているレシピも見ているようです。また、専門的な技術雑誌に目を通すこともあります。


外国の特許も担当するのでしょうか。

 特許は国ごとに申請する必要があります。外国の企業が日本で特許を取りたい場合は、日本の特許庁に出願します。また、日本の特許庁には日本の企業や大学はもちろん、世界中からも申請が来ます。


特許庁に入庁したきっかけは何ですか。

 勉強自体は好きだったのですが、研究職には自分は向いていないと感じていました。学部卒での就職で理系の知識を活かせる仕事に就きたいと思い調べているうちに、大学3年の冬頃、自分のやりたい事に合致する特許庁の仕事を見つけることができました。特許庁の仕事は、毎日新しい発明や発見に触れることができるため、知的好奇心が満たされる仕事であり、自分に合っていると感じています。


どのようなところで理系の知識が活かされていますか。

 特許庁では、学歴に関係なく理系が活躍しています。学生時代に、ものを調べて読むという研究の基礎体力を培ったことが、とても仕事に活かされています。

 大学3、4年の専攻は生物学科でバイオ系であったため、現在の担当である化学分野とは異なります。しかし、大学1、2年での基礎科目の勉強はとても役に立っています。個人的には、もう少し量子化学を真面目に勉強していればと、最近後悔しています。


特許庁ではどのようなスキルや資質が必要とされますか。

 特許法に関する知識は入庁してから学べるので、先ほど述べたような研究の基礎体力を身に付けておくと役に立つと思います。また、大学での研究は専門的であるため、通常は何一つ分からない状態からスタートすると思います。何一つ分からないという状態から出発し、自分で勉強して理解していく過程を経験することは、非常に今の仕事に活きていると感じています。

 見知らぬ発明の内容を理解していく過程を楽しく思える人には、特許審査官はとても向いていると思います。


就職活動をする中で、自身の専攻をどの程度活かそうと考えましたか。

 専攻の範囲で就職を考えたというより、理系という広い範囲で捉えていました。性格的に1つのことを突き詰めるというよりは、新しいことを調べる方が好きなので、特許庁での仕事が自分に合っていると感じます。

 配属先は専門分野と経験、適性等を考慮して決められます。学生時代の専攻だけでなく、自身の希望や興味も考慮してもらえるので、学生時代の専攻の範囲外でも活躍できるフィールドがあります。


国家公務員試験について、どのように対策していましたか。

 大学3年の冬ぐらいから試験の勉強を始めました。一般教養の試験対策は、書店にある過去問の参考書を解いて勉強していました。専攻分野の試験対策は、大学の授業内容の復習に加えて、人事院から過去問題を取り寄せて勉強しました。


女性として働きやすい職場環境ですか。

 特許審査官の仕事は、デスクワーク中心ですので、現時点では週2〜4日はテレワークが可能です。有給の休暇も取得しやすく、仕事の計画を立てやすい仕事だと思います。化学部(審査第三部)は体感ですが全体の3〜4割が女性で、子どもがいる職員も多いです。女性にとっても非常に働きやすいおすすめの職場だと思います。

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