日本科学未来館のサマーワークショップ「Picture Happiness on Earth 2016-17」をレポート!
昨年、参加者に大好評だった日本科学未来館のサマーワークショップ「Picture Happiness on Earth」が今年も開催されました。その様子をレポートします!
昨年の様子はこちら
「Picture Happiness on Earth」とは
「幸せってなんだろう?」をテーマに、アジア・太平洋地域の10代たちと、日本の女子中高生がコラボレーションして、日本科学未来館のシンボルでもある直径6メートルの地球ディスプレイ「Geo-Cosmos(ジオ・コスモス)」に映し出すコンテンツをつくりあげるワークショップです。
今回6つの国と地域で選ばれたシナリオはこちら
・クエスタコン - 国立科学技術センター(オーストラリア)
“Child Safety”
オーストラリアでは年間4万件以上の児童虐待が報告され、その40%以上を精神的虐待が占めています。
もしも世界から虐待がなくならないのなら、社会にできることとは何なのか、
私たちに何が出来るのかを問いかけ、考えます。
・千葉市科学館(日本)
“Living with Birds - Things Birds Teach us -”
鳥は人間生活と様々な面で密接に関わっています。多様な鳥の存在も、豊かな環境を示すものとして捉えられています。
近年、生息地(湿地・森)の環境破壊や過剰な狩猟などの脅威によって鳥の種類は減少しています。
このシナリオでは、鳥の生息地の保全行動を喚起しています。
・国立釜山科学館(韓国)
“Stay here together”
私たちは、地球の幸せのためには「調和」が重要だと考えています。
あらゆる場所で、調和を損なう最大の問題は、属性の違いによる紛争であると考えました。
このシナリオでは、外国人労働者に対する偏見というテーマで問題について考えています。
・サイエンス・アライブ(ニュージーランド)
“In Our Hands”
私たちの国は素晴らしい自然で知られているように、私たち10代はよく外で活動をします。
気候変動が歴史における最大の世界規模課題とされているメタンの排出量について調査をし、私たちに何ができるのか、小さくてもアクションを起こすことの大切さを伝えます。
・国立台湾科学教育館(台湾)
“Let the stars shine”
私たちは、たくさんの照明があるおかげで夜でも明るい生活をすることに慣れています。
しかし、過剰な照明や不適切な照明は、人間を含む動植物の活動を乱したり、健康にも悪影響を与えたりすると言われています。
不必要な照明をなくし、世界に星空を取り戻すことを呼びかけています。
・タイ国立科学博物館(タイ)
“HIV, it's on us”
HIVというウィルスが、AIDSという病気を起こします。
HIV感染やAIDSの発病が世界中で起こっていることも、感染者や患者に対して差別や偏見があることもHIVやAIDSについてあまり知られていないことが原因のひとつになっています。
あなたと、大切な人たちの明るい未来のために、Stop HIV and AIDS!
これら6つのシナリオを日本の女子中高校生が受け継いで、映像化していきます。
日本でのプログラムでは、夏休みの3日間のワークショップで映像作品を作り出します。
そして、11月には日本科学未来館にシナリオを担当した海外の参加者たちを招いて、プレゼンテーションを行います。
また、このプログラムで作り上げられた映像は、2017年11月13日から2018年3月31日までジオ・コスモスの常設コンテンツとして上映される予定です。
ワークショップ初日!
それでは早速、ワークショップの様子をレポートします。
2017年7月22日(土曜)に開催されたワークショップ初日は女子中高校生約100名が参加しました。
会場に到着すると、昨年のワークショップで見た顔もちらほら。2年連続で参加されている方もいるようです。
しかし、多くの方が初対面とのこと。まだちょっとみんな緊張した面持ちです。
このプログラムを通して、この場所でも新しい”つながり”が生まれます。
まず、参加者全員で、ジオ・コスモスの特徴を学び、昨年のプログラムを鑑賞しながら今から作り上げるコンテンツのイメージを膨らませました。
今年は特別に若手メディアアーティスト・落合陽一氏による特別講演も開催されました。
講演の後は、いよいよワークショップ開始。シナリオを作った各国、地域からのビデオメッセージを見たり、映像制作のプロたちからレクチャーを受けます。担当するシナリオごとのチームに分かれてからは、シナリオやその背景について理解を深めました。
ここからいよいよコンテンツ作りが始まります。
会場で、不思議な物体を発見しました!
これは、未来館スタッフの手作りで、今年より取り入れられたアイテムだそうです。
球体の表面を黒く塗装しているため、黒板のようにチョークで書くことができます。
このアイテムによって極地の湾曲具合やパーツの大きさを視覚的にも確認できるようになりました!
説明する時にも便利ですよね。
ワークショップ2日目
2日目も続けてお邪魔しました。
この日は台湾とタイのチームがそれぞれ、ディレクター、デザイナー、プログラマーの担当分野に分かれて作業を行います。
タイチームのテーマはHIVです。
大人でも難しいテーマをこどもたちが取り組みます。
そのためには、正しい情報をインプットする必要があります。
日本科学未来館の科学コミュニケーターの山本さん、金城さんがファシリテーターとしてチームをサポートします。
こちらは、山本さん手作りの資料です。
海外の参加者たちが考えたシナリオとこれらの資料を元に、チーム全体で映像化に向けたブレインストーミングを行いました。
その後、ディレクター、デザイナー、プログラマーの担当に分かれて、作業を行います。
ディレクターはナレーションや映像の構成を考え、台本を作成します。
考えたアイデアはデザイナーチーム、プログラマーチームにも共有し意見を求め、まとめます。
どうやら全員の合意が取れたみたいです。
自然に拍手が生まれます。
デザイナーは、映像に必要なビジュアルパーツを画像・映像編集ソフト(Adobe illustrator, Photoshop, After Effects) を使用して制作します。
プログラマーはアプリケーション開発環境(Unity)で、デザイナーが作ったコンテンツに動きを入れたり、地図上に統計データを可視化する為にコーディングを行います。
そして、この日の最後には、現時点でのコンテンツを実際にジオ・コスモスで上映してみました。
各パーツや文字の大きさ、動きについてみんなでチェックしました。
ここでも積極的に意見交換が行われています。
ワークショップは残すところあと1日です。
今日の課題と残りの作業を1日で終えなくてはなりません。
結構タイトです。限られた時間の中でいかに良いものを作り出すか、その為には何が必要なのかを実践で身につけ、学びます。
どんなコンテンツが最終的に出来上がるのか、とても楽しみです。
最後に、参加者にお話をお聞きしました。
参加者にインタビュー
山口さんは現在高校2年生。初めての参加です。
Q このワークショップに応募したきっかけを教えてください。
母親から「こんなのあるよ」と勧められたことがきっかけです。ただ、吹奏楽部の演奏会の日程も近く参加を迷いました。
そこで、部活のメンバーや先生に相談したところ「こんな素敵な機会はそうそうないから、参加してきなよ」と言ってくれたので、参加しました。
Q ワークショップでは今どんなことをしていますか。
私はタイチームのディレクションを担当していて、ナレーションの台本作りやコンテンツの構成を考えています。
また、みんなの考えをまとめて、各チームにしてもらいたいことを伝える役割をしています。
Q 参加されていかがでしょうか。
年齢もバラバラなのですが、みんな仲良くて、平和的に話が進むのでとても楽しいです。
また、このワークショップではいろんな中学、高校の人と議論したり、お話したりすることができるのがとても新鮮です。
Q 先ほど、現時点での映像を実際見ましたがどうでしたか。
あと1日しかないので、ちょっと危機感を感じています。
こうした方が良いかな、という様なアイデアは浮かぶのですが、それをどうやって、説得力のある理由をつけてみんな伝えようかなと今考えています。
まだまだやることは多いですが、出来上がりが楽しみです。
==
山口さん、ありがとうございました。
このワークショプでは映像を作り上げるための技術を学べることの他に、チームワークやコミュニケーションを実践的に学ぶことができるのですね。
きっと参加者はこのワークショップと通してこの夏、大きく成長することでしょう。
11月のプレゼンテーションが楽しみです。
プレゼンテーションのご案内
11月のプレゼンテーションは参加者以外の方もご覧いただけます。
ぜひ、彼女たちの勇姿を見に来てください。
開催日時:2017年11月12日(日)13:30~16:00(予定)
開催場所:日本科学未来館3階 「ジオ・コスモス」前
※ご参加にあたっては日本科学未来館の入館料が必要です。
詳しくは下記特別サイトをご覧ください。