データと数字、ランキングから見えてくる製薬業界
普段、当たり前のように利用している医薬品について、どの程度、私たちは理解出来ているでしょうか。
新しい医薬品ができるまでのプロセスや、薬効分類別医薬品の売り上げ、日本における製薬業界の実情と各国の事情など、データと数字から見えてくる製薬業界を解説します。
世界と比べた日本の製薬産業の市場
製薬産業は日本で今後も成長を期待できる数少ない産業の一つであり、医療の進歩へ貢献しています。
しかし、医薬品市場の伸びは世界全体の伸びと比較すると、国内の伸び率は鈍化の傾向にあります。
▼世界の医薬品市場規模
世界の医薬品市場に目を向けると、これまで、医薬品市場を牽引していたアメリカ合衆国の成長率が鈍化しています。これは、先進諸国の共通課題である医療費の持続性が影響しています。一方、中国やインドなどの新興国市場は著しい成長が見られます。
そのような中、日本の製薬産業は厳しい環境変化に対応しながら、世界に誇ることができる研究開発力・創薬創出力を強化して、新たな治療法を切り開く新薬開発を目指しています。
製薬産業では米国が大きなシェアを占めており、世界の主要国の売上高や研究開発費用などを見ると、上位の製薬企業はほとんどが米国の企業であることがわかります。
日本の企業で上位に入っている企業は少なく、世界の製薬企業売上高ランキングを見ていても、上位25以内にはほんの数社しか入っていないように見えます。ですが、これは日本の製薬産業が遅れているわけではありません。
▼世界の製薬企業売上高(2018)
出典:製薬協「てきすとぶっく2020-2021」
研究開発費に対する売上高や、主要国別の売上高などのデータを見ると、米国、中国に続いて日本が入っていることがわかります。このことからも、日本の製薬業界はしっかり世界と肩を並べているということが言えるでしょう。
世界と比べても、日本の製薬業界は遜色ないものであり、また、製薬業界は、国内の産業界の中でも、今後も発展し続ける産業の一つであるため、安定していて将来性もある業界だと言えるのではないでしょうか
▼高付加価値産業としての製薬産業
出典:製薬協ガイド2021
日本の優れた創薬力
新たな医薬品を創り出すときは、多くの化合物の中からスクリーニングを行い、新規医薬品の候補になりそうな化合物を探し、様々な試験や治験を行って、有効性や薬理作用、安全性などを確認した後、実際に使える医薬品として、販売されます。
中には例外もありますが、開発から販売まで大体10年前後の月日がかかり、そのような長年にわたる研究開発を支えるためには、多額な研究開発費が必要です。日本の新薬創出にかける思いは、その研究開発費の比率にも表れています。
売上高に対する研究開発比率
日本の製造業の売上高に対する研究開発費比率が4.28%のところ、医薬品製造業は10.08%、製薬企業大手10社の平均では17.30%にも上ります。あらゆる産業のなかで、トップクラスの研究開発投資を製薬企業が行っていることがわかります。
▼国内主要製造業種別 売上高研究開発費比率(2019年)
出所:総務省「科学技術研究調査報告(2020年)
出典:日本製薬工業協会 DATA BOOK2021を基に作成
世界と比べた日本の創薬力
新薬を開発するための技術は、非常に高度かつ複雑であるため、世界を見渡しても新薬創出国は数えるほどしかありません。その中で、日本は新薬の開発品目数において、世界第3位を誇ります。また、近年は国内大手製薬会社を中心にグローバル化が加速しています。
▼医療用医薬品世界売上 上位100品目の国別起源比較(2019年)
出所:Copyright©2020 IQVIA. IQVIA World Review Analyst 2019, IQVIA Pipeline & New ProductIntelligence, EvaluatePharma, Clarivate Analytics Cortellis Competitive Intelligenceを基に医薬産業政策研究所にて作成(無断転載禁止)
出典:医薬産業政策研究所 政策研ニュースNo.61(2020年11月)
データでみる製薬企業
製薬企業についてデータでみてみましょう。
2020年決算時 製薬企業売上高世界ランキング
順位 |
企業名 |
国 |
売上高 (億ドル) |
1 |
ロシュ |
スイス |
624.06 |
2 |
ノバルティス |
スイス |
486.59 |
3 |
メルク |
米 |
479.94 |
4 |
アッヴィ |
米 |
458.04 |
5 |
ジョンソン&ジョンソン |
米 |
455.72 |
6 |
グラクソ・スミスクライン |
英 |
440.59 |
7 |
ブリストル・マイヤーズスクイブ |
米 |
440.59 |
8 |
ファイザー |
米 |
419.08 |
9 |
サノフィ |
仏 |
410.87 |
10 |
武田製薬工業 |
日 |
287.80 |
出典:AnswersNews
世界ではロシュが売上高、世界一位で624億ドル(2020年決算時)となり日本トップの武田製薬工業は287.8億ドルと世界10位にランクインしています。
先進国共通の課題である、社会保障分野における医療保険制度をめぐる持続可能性の問題に加え、2010年前後から、世界で発売されている多くの化成品の大型製品が特許切れを迎えます。世界の製薬産業では、巨大企業を中心に新しいモダリティ(抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療、細胞治療など)へのチャレンジを含め医薬新薬開発競争が激化してきています。
今後、日本の研究開発拠点としての地位の確保、医薬品市場の活性化のためにも、海外企業からの投資促進やバイオベンチャー促進のための諸施策は日本の成長を推進する上で、急務となっています。さらに、新興国における医薬品アクセス問題と知的財産権の問題は依然として大きな課題です。これらの課題は一企業、製薬産業界として努力するだけでは克服できない課題も多く、国家戦略として、産学官連携協力体制を拡充していくことが必要です。
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