【仕事紹介】油層エンジニア編
油層エンジニアは何をする人?
石油・天然ガス上流(Upstream)事業とは、一般的に、油ガス田を発見、井戸を掘削し、生産設備を設計・建設、石油・天然ガスを生産するまでのことを言います。
この油ガス田の発見・評価・開発・生産フェーズにおいて油層エンジニア(Reservoir engineer)は石油・天然ガスのデータ取得、取得データを用いた貯留層性状や坑井(こうせい:井戸のこと)能力の評価、開発計画策定等を行い、いかに経済的に油ガスを多く回収できるかというミッションに挑戦するエンジニアです。
生産エンジニア(Production engineer)が坑井(下図TubingやCompletion)から生産設備までのプロセスを主に担当するのに対して、油層エンジニアは貯留層(Reservoir)から坑井元(Wellhead、下図の場合はChoke)までを主に担当する技術者といえます。
石油・天然ガスを貯留層から経済的に最大限回収するには、油層エンジニアは利用可能なあらゆるデータを基に、不確実な地下貯留層性状を可能な限り理解し、現実的で経済的な回収策を講じる必要があります。
地質技術者(Geologist)や物理探査技術者(Geophysicist)と協力しながら貯留層の岩石物性値や堆積環境について理解し、石油・天然ガス等の流体性状を把握し、坑井内各機器の仕組み等については掘削・仕上げ技術者(Drilling & Completion engineer)の協力も得ながら理解し、時には生産技術者や施設技術者(Facilities engineer)の協力の下地上設備の制約条件も鑑みながら、不確実要素の把握、課題抽出の上、経済的な観点から開発計画を検討・策定します。
他分野の専門技術者との協働を通じて大きな目標を達成するダイナミックでチャレンジングな仕事です。
出典:https://www.evpvacuum.com/oil-free-vacuum-pump-in-oil-production-system.html
油ガスの回収手法の種類
皆さんは油ガスの採収技術にはどのような種類があるかご存知でしょうか? 油ガスの採収技術は、その採収段階に応じて、大きく以下の3種類に分けられます。
- 油層が持つ自然の排油エネルギーを利用する一次採収法(Primary recovery)
- 油層に人工的に排油エネルギーを与え産油量増大を図る二次採収法(Secondary recovery)
- EOR(Enhanced oil recovery)と呼ばれる増進回収技術を用いる三次採収法(Tertiary recovery)
一次採収終了が終わった後は、水攻法や油層に水やガスを圧入する油層圧力維持法(pressure maintenance)による二次採収法を適用し、その後に三次採収法を行う、という時間的順序に従って生産を行うのが従来の開発で取られるステップです。
最近では、中東地域等において、水やガスを油層に圧入する油層圧力維持法を生産早期から適用することもあります。また、若干の一次採収後、従来三次採収法に分類されていた攻法を適用して採収率を増加させるなど、これまでの時間的分類に寄らない開発例も出てきています。
一つ一つの貯留層が持つ個性(物理的性状)を十分理解するように努めながら、これらの回収技術を適切に適用し、いかに経済的に回収率を最大化するか日夜努力を続けているのが油層エンジニアです。ちなみに、以前紹介があった人工採油は一次採収法に分類され、生産エンジニアも活躍できる分野です。
出典:https://www.mlit.go.jp/common/001235507.pdf
オフィスだけでなく掘削現場での勤務機会もあります
油層エンジニアはオフィス業務のみでなく、坑井のデータ取得等の目的で、現場作業に計画責任者として立ち合う場面もあります。
自身が立てた作業計画に基いて、安全かつ適切に準備・作業が行われているか?質・量共に必要十分なデータが取得できているか?等をチェックし、トラブルが発生した場合には掘削作業責任者や事務所と迅速かつ密にコミュニケーションを取りながら臨機応変に対応します。
実際に現場でリーダーシップを発揮しながら、掘削技術者、生産技術者、鉱場関係者、事務所関係者、請負業者等の関係各所と一丸となって業務を遂行することで、エネルギーの安定供給に向けた着実な一歩を歩むことができます。
出典:https://www.inpex.co.jp/energy/rig.html
石油・天然ガス事業の考え方や知識をさらに身に付けるには?
本シリーズ記事や当社ホームページ記載情報では物足らず、石油・天然ガス開発業界について自ら進んで学んでみたい!もっと知識を吸収したい!でも専門用語が多すぎて分からない!高額の教科書を買うのもちょっと…という方に以下のサイトをご参考までにご紹介致します。
- PetroWiki:石油開発に関するWikipediaのような情報サイトです。教科書がなくてもある程度の専門用語や用いられている科学的な理論等について知ることができます。
- SPE(Society of Petroleum Engineers:石油技術者の世界規模の協会)YouTube動画チャンネル:資源開発に関連する様々なTopicについて各専門技術者達がパネルディスカッションをしている動画等がアップロードされています。資源開発に携わる世界の技術者達がどのようなことを考えているか?垣間見ることが出来るかもしれません。SPEへの入会は有料ですが、YouTubeにアップされている動画は誰でも観ることができます。
- JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)用語辞典:PetroWikiは英語で作成されていますが、こちらは石油開発事業に関する専門用語(たくさんあります)の意味を日本語で参照することができます。
もしいずれかご興味があれば是非チェックしてみて下さい。また、当社内での教育については、入社後すぐに新入社員は専門別座学研修および当社が操業する国内現場での研修を受けることができます。
学生時代に地質、物理探査、油層、生産、掘削、施設、HSEに関して勉強したことがない方も多く入社されていますので、理学・工学の理系のバックグランドがあれば、新入社員研修を通じて初心者でも充分に知識を身につけることが可能です。
最後にリケジョのみなさんへ
日本のエネルギーへの安定供給、暮らしの豊かさの確保に挑戦したい方、少しでも我々の業界や油層エンジニアの業務が面白そうと感じられた方は是非当社のホームページをご覧下さい。また当社主催・共催のイベント等にも是非ご参加下さい。この記事を通じて、少しでもエネルギー開発業界や油層エンジニアの業務に興味を持っていただけたら幸いです。