人々の暮らしをガラリと変えるミッションを達成せよ! 理系にとっても、国家公務員って面白い!
国全体に関わる仕事をする国家公務員。存在は知っていても、どんな仕事をしているのか、よくわからない人も多いことでしょう。行政のデジタル化を急速に推し進める今、理系的スキルが求められる仕事が多く存在します。
今回、デジタル庁・総務省で働く女性国家公務員に理系女子学生が仕事内容や働き方、やりがいについて直接お話を伺いました。
お話を伺った国家公務員の職員
■椿さん
国土交通省からデジタル庁に出向。現在、入省から6年目。
■杉野さん
総務省に在籍。国際関係部署などを経て、現在、地域通信振興課デジタル企業行動室。民間での勤務経験を経て現職。現在、入省から3年目。
ミッション1:個人情報を守りながら活用せよ!情報銀行
(学生)現在のお仕事について具体的に教えてください。
総務省(杉野さん):
いくつか携わっている仕事がありますが、「情報銀行」がその一つです。みなさんがアプリ等の様々なサービス利用を始める際には、利用規約やプライバシーポリシーに同意する必要があると思いますが、中身を読まずに同意している人がほとんどかと思います。こうした規約等には個人情報の取り扱いについても表記がありますが、消費者の多くは、自分が何に対して同意しているのか理解せず、個人の認識の範囲外で個人情報の利用がなされているというのが実態です。そこで、個人が自分の意思のもと、個人情報を活用し、パーソナルデータの流通を促進すべく、情報銀行というものが考えられました。個人が安心してデータを預けられる、かつ企業側も消費者の理解がなされた状態で個人情報の利用ができるという、双方にとって安全な仕組みを定めています。
具体的には総務省と経済産業省で指針を策定し、それに基づいて民間団体である「日本IT団体連盟」が事業者を「認定情報銀行」として認定します。我々は情報銀行認定制度のルール整備のための検討会の開催や、そのための調査・実証等を予算事業で行っています。
(学生)最近ネット上で、クッキー情報を取得するということについて制限がかかる、“Cookieless”という風潮があると思うのですが、それも踏まえて情報銀行のルールが策定されているのでしょうか。
総務省(杉野さん):
Cookielessの風潮というよりは、元々GAFA(世界的IT企業「Google」「Amazon」「Facebook(現Meta)」「Apple」の4つの会社の頭文字を取った言葉)などの海外プラットフォーマーが、知らないうちに日本人の個人情報をたくさん持っていってしまい、国内には還元されていないのではないかという問題意識がありました。その情報を取り戻して活用しようという発想から、情報銀行が始まりました。もちろんCookielessの風潮は、個人情報を集める安心・安全な仕組みである情報銀行にとっては追い風なのではないかと思っています。
(学生)ありがとうございます。新たな試みである情報銀行で、個人情報の活用が進化していきそうで、ワクワクしますね。
ミッション2:土地利用・管理をDX!ベースレジストリ
(学生)椿さんは、現在どんなお仕事をされていますか。
デジタル庁(椿さん):
私が主に携わっているのは、ベース・レジストリの整備です。住所や不動産登記といった土地関係のデータをデジタル活用できるようにしています。土地を管理する台帳はたくさんあって、例えば不動産登記や、固定資産課税台帳、さらに農地台帳などさまざまです。現状では各台帳がそれぞれの所管の法律の下で、決められた主体が管理する状況になっており、これをテクノロジーによって紐づけようという試みです。
例えばある土地を農地から宅地に変え、地目が変わる場合、農地台帳にも不動産登記にも申請を行わなければなりません。これが1つの手続きでいっぺんに変えられたら便利ですよね。また、誰が持っているのかわからず検索できない「所有者不明土地問題」がありますが、いろいろな台帳が紐づき、所有者の死亡情報や不動産登記など、データが統合できれば、所有者や住所の変更が追跡しやすくなります。
このように各台帳をデジタル技術で繋いでいくと、メリットがたくさんあります。しかしそこには実は大きな課題もあります。
各台帳はそれぞれの法律で管理されており、情報の提供先も法令化されています。そのため、技術的にデータを統合するだけではなく、そこに紐づく法令も一緒に整備する必要があります。
また、一つの台帳のデータを変更した際に、それに紐づく他の台帳も自動的にデータを書き換えるのか、それとも、共通の情報データベースがあって、そこを各台帳が参照しにいくようにするのかなど、運用していく上でシステムにどこまで許すのかということを設計していきます。そのためには、それぞれの台帳を持っている所管省庁と、よく議論をした上でシステムや制度の改定、運用方法などを検討していくことが必要です。
このように、技術面だけではなく、制度面からも考える必要があるのは、デジタル庁だけではなく、各省庁が取り組む施策すべてに当てはまることであり、国家公務員の仕事ならではかもしれません。
ミッション3:キャッシュレスを加速せよ!JPQR
(学生) 他にはどんな仕事をされていますか。
総務省(杉野さん):
総務省でも地域のキャッシュレスの普及について取り組んでいます。近年日本のキャッシュレス普及は一気に進んだものの、世界の主要国の決済比率に比べれば日本の数値は依然として高くなく、特に小規模店舗のキャッシュレス導入率は低くなっています。そんな中、政府は2025年までにキャッシュレス決済比率を4割程度とする目標を掲げています。
近年急速に普及し、サービスが乱立しているコード決済の仕組みとして、QRコードをお店側が用意して、それを消費者のスマートフォンで読み取って決済する方式があります。私が担当している統一QRコード(JPQR)というのは、こうしたQRコードを各決済事業者間で統一できるようにした共通規格のことです。多くのコード決済サービスを導入したお店に、決済用のQRコードがたくさん並ぶとなると見た目も良くないし操作も煩雑ですよね。それを解決するのがJPQRです。JPQR1枚で複数のQRコード決済に対応することができますし、QRコードが1つになるので消費者にとってもわかりやすいです。
現在、JPQRは一括で複数のQRコード決済事業者に申し込むことができ、導入費用は無料です。また、JPQRが印刷されたステッカーを置くだけで決済可能となるので、お店側にかかる維持費は実際に決済が発生した時の手数料のみです。JPQRの普及促進に向けて、総務省としても様々な取り組みをしています。
ミッション4:日本の建設業を海外展開!
(学生) お二人の話を聞いて、国家公務員がどんな仕事をされているのかイメージしやすくなりました。世の中を大きく変える仕事をしている中で、楽しいと感じるのはどういう時ですか。
デジタル庁(椿さん):
以前、海外に日本の建設事業者が進出する手助けをしていました。中小建設事業者は、人口減少や仕事の大変さから人材採用に苦戦しています。そこで、海外で採用を行い、日本で働いてもらったり、事業自体を海外で展開したりすることを考える企業が出てきました。例えば掘削技術が売りの企業は、海外で地下を掘って安全な湧き水を生活用水にすることを考えます。湧水利用は、干ばつ、台風など気候の影響を受けやすいエリアや、防災面でもメリットが大きいのです。
しかし、実際に海外事業を始めようとしても、知名度の低い中小企業では現地採用が難航します。そこで国土交通省が現地大学と合同で就職説明会を開催しました。企業の皆さんと話し合いを重ね、採用を進め、採用された人材が日本で活躍して職場を明るくしていると聞くと、公務員冥利に尽きるなと思います。大切な税金を使ってイベントを行い、実際に良い結果に繋がった時は1年頑張って良かったなと思いましたね。
総務省(杉野さん):
海外対応については、私も印象深い経験があります。国際関係の部署にいた時、副大臣の出張に同行する機会がありました。国際担当は繁閑の差が激しく、大臣や副大臣等の出張が発生すると一気に忙しくはなりましたが、私が随行した海外出張はメンバーが限られていたので、当日は副大臣とランチを一緒にとり、雑談をすること等もありました。若手職員が政治家と対面で雑談をしながらご飯を食べるという機会はなかなか無いと思うので、準備は大変でしたが、良い経験だったと思います。
(学生) お二人の仕事内容をお聞きして、自分たちが知らないところで、私たちの生活を良くしていただいているのだなと、感謝の気持でいっぱいになりました。学生時代から国のために、国民のために働きたいと考え国家公務員になられたのでしょうか。
デジタル庁(椿さん):
実は、国家公務員になれば、良い社会見学になるかな、という気軽な気持ちがきっかけでした。また、私は乗り物がすごく好きで、国土交通省に入りました。
社会勉強という気楽さで入った私にとってこの仕事は、世の中はこういう風に回っているんだと感じられ、知的好奇心を満たされるとても魅力的な職場だと感じています。
総務省(杉野さん):
私はメーカーに一度就職したのですが、もっと幅広くいろいろな社会課題に触れたいなと思いました。その中で、国家公務員のジョブローテーションは魅力の1つで、分野横断的に様々な職場環境を経験することのできる環境に憧れて、国家公務員に転職しました。
(学生) ジョブローテーションなど、所属先や役職、立場が変わっていく環境なのですね。異動などの人事は専門的なスキルを考慮されて決まるのでしょうか。
内閣人事局
技術系であれ事務系であれ、行政官として採用されている場合には、専門分野にとらわれずに人事評価や適性を踏まえた配属が行われます。幅広い経験をしてもらいたいということから、知識の無い分野に行ってもらうこともありえます。はじめは全般的に幅広く素質を伸ばす形になりますが経験を重ねていく中でキャリアを貫く軸が見えてくるのではないでしょうか。
最初の数年程度ではまだ軸を実感できないかもしれませんが、10〜20年目になると、繰り返し経験したテーマや分野について専門性が身についてくると思っています。
なお、試験区分には、大学院を卒業された方を対象としたものもあります。理系ではデジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境といったみなさんの専門に近い分野で試験を受けることができます。大学院の院試対策で勉強された内容がそのまま活かせたという話も聞いていますよ。
(学生)知識がない分野に異動になった場合、そこに対応するスキルはどのように身につけるのでしょうか。
デジタル庁(椿さん):
もちろん前任の方から引き継ぎは受けますが、異動する前に勉強する期間が与えられるわけでは無いので、基本的にはオンゴーイングでキャッチアップして覚えていくしかありません。
自分で本を買って勉強することもありますが、スキルが身につく一番の方法は、人に会うことだと思います。公共交通の部署にいた時はいろいろな地域のバス会社や鉄道会社など、実際に働く方に直接会って、お話を聞かせていただきました。いろいろな課題に向き合いながらお仕事されている人の話を聞くことは、国民の方のための仕事をする上でとても重要です。また、お話を聞くことで専門的な知識を得ることもできます。
総務省(杉野さん):
引継ぎ資料などはできるだけ読み込みますが、椿さんが言うようにオンゴーイングで仕事をしながら勉強するのが基本です。
よく分からない状態でよく分からない資料を読んでも頭に入って来ないので、仕事をしながら分からないことを分かるまで調べて、自分の中で理解する。理解できなかったら人に聞くという地道な方法が一番良いと思います。疑問点が発生した段階でその都度解決していく、ほったらかしにしないというのが知識を身につけていく上で大切ではないでしょうか。身も蓋も無いかもしれませんが、与えられた課題に対して真摯に一生懸命取り組んでいたら、いつの間にか分かるようになっていたというのが実感です。
また、会議や打ち合わせの場で、思ったことや疑問点はどんどん質問していくことが大切だと思います。
(学生)国家公務員の方が普段どんな仕事をされているのか知らなかったのですが、お話をお聞きして、とても身近に感じることができました。また、様々なお仕事に携わることができ、スケールの大きな仕事ができることにとても魅力を感じました。
本日は貴重なお話をありがとうございました。
▼デジタル庁採用HP
https://www.digital.go.jp/recruit/newgraduates
▼総務省総合職技術系(情報通信行政)採用HP
https://www.soumu.go.jp/menu_syokai/saiyou/isougou.html
▼国土交通省採用HP