シリーズでお届けしている国家公務員の技術系職員が携わる業務について、今回が最後となりますが、環境省の自然保護管理分野と、農林水産省の森林管理分野の業務を紹介します。

環境省 Ministry of the Environment

自然と共生する社会づくりの推進

　自然と共生する社会の実現に向けて、生物多様性の保全を推進しています。自然技術職員（通称レンジャー）は、主に国立公園など保護地域の指定や管理、野生生物の保護・管理、自然再生、自然とふれあうための施設整備などを担っています。

中部山岳国立公園

　生物多様性条約ＣＯＰ15（2021・2022年開催）に向けては、愛知目標に次ぐ新たな世界目標検討のための国際的な議論に貢献し、また生物多様性に配慮したビジネスの推進にも取り組んでいます。

生物多様性条約関連の会合に参加した職員ほか

　2021年7月に日本で５番目の世界自然遺産登録が決定した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」。各地域で関係機関や地域住民をはじめとする多様な主体と協働し、マングース等の侵略的外来種の防除、希少種の保全などに取り組んでいます。

　全国各地の国立公園や野生生物の保護管理の現場にはレンジャーが配置されており、地域に根ざした自然の保護や利用を推進しています。

世界遺産登録に向けた現地調査の際にユネスコの諮問機関（IUCN）の調査員を案内するレンジャー

沖縄島北部に生息するヤンバルクイナ（絶滅危惧種）

職員に聞く
「地域と一緒に“世界水準のナショナルパーク”づくりに取り組んでいます」

　国立公園内の巡視、規制されている行為に関する許可申請の審査、ビーチの利用ルールづくり、環境教育など、日々様々な業務を行っています。現在は、「世界水準のナショナルパーク」の実現に取り組む国立公園満喫プロジェクトの一環として、現地の状況を踏まえたビジターセンターの整備や地域と連携した運営体制づくりも行っています。

　レンジャーは担当する地域に住み、日本を代表する自然環境を自ら体感し、環境省の現場の代表として多くの人々と関わりながら業務を行えることが大きな魅力です。また、国立公園に関する業務が地域の振興につながることも醍醐味の一つだと思います。

※記載された役職・業務内容は執筆時のものです。

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農林水産省 Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries

　森林環境教育の場として国有林野の利用を進めるため、森林環境教育のプログラムの整備やフィールドの提供等に取り組んでいます。

　この一環として、学校等と森林管理署等が協定を結び、国有林の豊かな森林環境を子供たちに提供する「遊々の森」の設定を進めています。

　また、森林環境教育の推進を図るため、教職員等への普及啓発や林業体験の指導、森林環境教育のプログラムや教材の提供等に取り組んでいます。

　国有林野事業は、国内最大の森林所有者として、林業事業体への事業の発注を通じ、その経営能力の向上等を促しています。一例をあげると、全国の森林管理局では、一定の区域において間伐及び路網整備を一括して発注する取組を進めており、この取組では、林業事業体が創意工夫した効率的な路網整備や高性能林業機械を組み合わせた作業システム等を企画提案することになっており、生産性の向上や林業事業体の育成整備につながることが期待されています。

　我が国の人工林資源は本格的な利用期を迎えており、林野庁では、適切な森林の経営管理により「伐って、使って、植える」という形で循環利用を図っています。このためには国産材の安定供給と共に、需要拡大が重要であり、住宅分野での国産材利用率の向上に加え、中大規模建築物の木造化、耐火木質部材やCLTの利用促進、木質バイオマスのエネルギー利用、木の良さや価値を実感できる「木育」などの普及啓発などに取り組んでいます。

職員に聞く
「地域と森林をつなぐ森林づくり」

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　私は山間部の森林事務所で現場の最前線に立ち、国有林の管理運営を行っています。業務内容は、伐採のための収穫調査、間伐等の請負事業の監督、地域の方からの問合せ対応まで多岐に渡ります。

　管轄区域内の保護林では地域の活動団体と「多様な活動の森」協定を締結し、宮崎北部森林管理署と地域住民とが連携して、シカネット設置等の保全活動を行っています。全国の保護林ではシカ被害が深刻化していますが、当保護林では８年間かけてシカネットを設置したことで、植生が回復してきました。森林官として地域住民と森林の問題を共有し、森林づくりに積極的に関わってもらう架け橋となり、次代へ引き継ぐ豊かな森林を作っていくことにやりがいを感じています。

※記載された役職・業務内容は執筆時のものです。

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