【現場で活躍する国家公務員】豊かな自然美を誇る国立公園。五感で感じ、守り、伝えていく。
この国の風景美を守り続けていくために
四季折々に豊かな表情をみせる森林や渓⾕。苔むした⼭岳地帯。希少な動植物が⽣息・⽣育する湿地。⾊とりどりの⿂で賑わうサンゴ礁。⽇本には世界に誇る⾃然風景がたくさんあります。国⽴公園として定められたそれらの地域を、守り伝えていくのが私たちレンジャーの使命です。みなさんは、⼭の中で茶⾊いコンビニを⾒かけたことはありませんか?あれは、⾃然の風景を損ねないよう建物の⾊や⾼さに規制をかけているんです。公園内の開発が適正に⾏われるよう、その許認可を出すのが私たちの仕事のひとつ。
また、登⼭道の設置やビジターセンターの運営といった施設の整備・管理、清掃活動、巡視など、多くの⼈に⾃然のすばらしさを伝え、楽しんでもらえるよう施策を進めています。現在、私が担当しているのは、秩⽗多摩甲斐国⽴公園です。1都3県にまたがり、全国に32ある国⽴公園の中でもその⼤きさはトップクラス。壮⼤な⾃然の中に⾝をおき、その息づかいを五感で感じながら、仕事に取り組める。この環境は、特別だと思いますね。
自然を想い、多くの人と向き合う仕事
この仕事で重要なのは、⼈と⾃然が共⽣する形をつくり続けていくことだと思います。⽇本は狭い国⼟に多くの⼈が暮らす国。国⽴公園内にも多くの⼈が住んでいます。地域住⺠の理解が得られなければ、公園の管理は成り⽴ちません。たとえば⾏為規制についても、葉っぱ⼀つとるのにも許可が必要な場所と、⼈の⽣活に⽀障がでないよう、規制が緩やかな場所をわけるなど、エリアごとに強弱をつけるなどの⼯夫が必要です。⼈々の⽣活と⾃然の両⽅を守っていく⽅法を模索していきます。
それは決して簡単なことではなく、時には調整が難航することもあります。そこにこの仕事の難しさを感じるとともに、私たちの仕事の重要性も感じます。カモシカ、ツキノワグマ、ニホンザルにニホンジカ。⽇本を代表する素晴らしい風景や、とても美しい花をさかせる植物。そうした豊かな⾃然を目の当たりにしながら、⼈間の⽣活に向き合っていく。⼤変なこともありますが、やりがいの⼤きさも⼗分実感しています。
自然を想う心を、育みたい
今、ニホンジカの対策に取り組んでいます。実は増え過ぎたシカが、樹⽪を剥いで⽊々を枯らしてしまったり、希少な植物を⾷べてしまうことなどにより、森林⽣態系を衰退させるという事態を引き起こしているんです。解決のために、どういう対策をとっていくべきか、⾃治体、関係省庁、専門家、地域の⽅など、実に多くの関係者が情報交換しながら協⼒体制をとっています。私たちも、地域ボランティアの⽅と⼀緒に樹⽊に保護ネットをまいたり、希少植物を囲う柵を設置したりしています。また、植⽣調査を続けながらその効果を検証しています。
この⾃然美はいろんな⼈の理解と協⼒の積み重ねの上に成り⽴っています。だからこそ、ぜひもっと多くの⼈に知ってもらいたいと思いますね。ときどき開催する「⾃然ふれあい活動」では、例えばこどもたちと動物の⾜跡や糞を探したり、果実をかじったあとからどんな動物がいるか考えたり、⾃然を楽しんでもらえるよう⼯夫しています。まず⾃然の良さを知ってもらい、親しみを持ってもらう。そこから⾃然を⼤事に想う気持ちを育ててもらえたら嬉しいです。
山が好き。シンプルな想いは変わりません
昔から⼭登りが好きで、⾼校⽣のときは⼭岳部、⼤学でもワンダーフォーゲルクラブでした。でも活動を続ける中で、トイレが汚かったり、登⼭道が複線になっていたり、植物が踏み荒らされている現場にも遭遇して。こうした問題を解決したいと思い、環境省の仕事に興味を持ちました。⼤好きな⼭に関わりたいという想いも強かったので、全国の美しい⾃然を舞台に仕事ができるというのも、⼤きな魅⼒でしたね。今、レンジャーになって8年目ですが、やはりこの仕事が好きです。
たとえば、⾃然ふれあい活動に参加した⽅が、「こんなきれいな場所があったんだ」と喜んでくださる。⾃分が許認可に携わった建物が、⾃然になじむ形で設置されているのを確認できる。こうして⾃分の仕事の成果を直接実感できるのは何よりのやりがいです。
仕事で⼭⼩屋に泊まることもあります。周りから「⼤変だね」といわれますが、私にとっては最⾼の仕事。地域の⾃然とそこに関わる⼈たちからたくさんのことを学びながら、今後も成⻑していきたいと思っています。
PROFILE
環境省 関東地方環境事務所 奥多摩自然保護官事務所 / 2008年入省
仲 山 真 希 子
⼭梨で⽣まれ、⾃然を⾝近に感じながら幼少期を過ごす。⾼校⽣の頃から⾃然と⼈の関わり⽅に興味を持ち、⼤学も⽣物資源学類へ進学。学⽣時代は森林⽣態学、植⽣学の研究をすすめる傍ら、部活動では⼭登りに没頭。⼊省後は九州、近畿地⽅の国⽴公園を担当した後、地球環境局で発展途上地域への環境協⼒に関する業務に従事。2013年より現職。プライベートでは同年に結婚。今後も家庭と仕事の両⽴をはかりたいと語る。