「機械設計」の仕事ってどんなことをするの?キャリアの積み方と学生時代にやっておきたいことを紹介します
理系を選考した方には「車を開発したい」「身の回りのモノを作りたい」と考え、メーカーでの「機械設計職」への就職を志望している学生もいるのではないでしょうか?
しかしモノづくりの現場は一昔前の製品開発のように「少人数で時間をかけて製品を作る」ことはほとんど無く、「多人数で短期間のうちに製品を作る」メーカーがほとんどです。
そのため希望のメーカーに就職出来ても自分が想像していた仕事が出来ずに、数年で転職してしまう人が毎年一定数います。
そこで本記事ではメーカーで機械設計職を10年程勤めた筆者の経験から、
・機械設計者の実際の業務内容
・機械設計者のキャリア形成の仕方
・学生時代に準備しておくべきこと
をそれぞれ紹介します。
これから機械設計者を目指そうと考えている方は今後のキャリアを考える上で、是非参考にしてみて下さい。
目次[非表示]
- 1.機械設計ってどんな仕事?
- 1.1.製品開発の流れ
- 1.2.機械設計者の仕事内容
- 1.3.機械設計者に必要な知識・スキル
- 2.キャリア形成の仕方
- 3.学生時代に準備すること
- 3.1.必要な知識の習得
- 3.2.コミュニケーション力の向上
- 4.まとめ
機械設計ってどんな仕事?
製品開発の流れ
製品開発は、企画→設計→試作→生産の順に行います。
① 企画
企画は製品の性能や仕様を決める段階です。
例えば車であれば、駆動方式(EV、ハイブリッド)、車重、用途、乗員数、大きさ、販売先などについて他社の競合車や販売先のニーズを調査して決定します。
② 設計
設計は企画で定めた要求性能を製品に落とし込んでいく段階です。
最近はCAD(製図ソフト)やCAE(解析ソフト)を使って3D図面の作成や機能・性能検証をすることが主流となっています。
③ 試作
試作は図面通りの製品を作り、企画で定めた要求性能を満足しているかを評価する段階です。
PCの性能が向上した昨今では設計における机上の計算(CAE解析)で製品開発が完結することを目指す企業が多いですが、実際の現場では予想外の事態が発生することが多く、まだまだ試作を必要とする企業が少なくありません。
④ 生産
生産は試作の結果を盛り込んだ図面から実際に販売する製品を量産する段階です。
量産するための製品の組立・生産ラインの設計や品質管理体制などを構築していき、製品の生産体制を作ります。
機械設計者の仕事内容
機械設計者は主に「設計」を担当する技術者を指します。設計業務は企画で出たデザインや性能を実物に落とし込む作業で、
① 材料、めっき、塗装などの選定
② 締結方法、接合方法、組立方法などの決定
③ 構造、部品形状の作成
④ 強度、疲労寿命、振動・騒音などの性能評価
などを考える仕事です。
しかし自動車や飛行機などの日本が誇る大企業では、製品開発期間の短縮による業務の細分化が進んでおり、「機械設計」での募集は上記の「①~③を図面に落とし込む作業」が主な業務となっています。
ただし全ての図面は④の性能評価によって決定されるため、大企業の機械設計部門が単体で決定出来る作業は基本的にありません。
そのため大企業の機械設計者の業務は「各評価部門からの要望を調整して図面を描いていくこと」とも言えます。
機械設計を志望して就職した人が理想とギャップを一番感じるのはこの部分です。
これから就職活動をする学生は、希望する就職先の採用担当者に実際の業務が自分の希望に沿った内容かどうかを必ず確認するようにしましょう。
機械設計者に必要な知識・スキル
① 必要な知識
4力学(材料力学・流体力学・熱力学・機械力学)、工作機械・加工方法、材料などの規格や法律、製図の知識
② スキル
コミュニケーション力、CADやCAEなどのソフトのオペレーションスキル
キャリア形成の仕方
自社製品を扱っている大手企業に就職することをゴールとするとキャリア形成には大きく分けて二つの方法があります。
大手企業に就職
① メリット
大手企業で働く一番のメリットは社内での研修制度が充実していることです。企業によっては設計志望でも新入社員研修において小売店での販売業務や工場での生産業務など、希少な業務体験を得ることが出来ます。
また担当する業務が細分化され効率化が実現しており業務の習得が容易なため、その業務のスペシャリストになりやすい環境があります。
② デメリット
デメリットには役割が細分化されているため知識が偏りやすいことです。
性能評価まで出来る本来の「機械設計技術者」を目指すのであれば担当業務以外の知識は自主的に勉強していく必要があります。
また大手企業では業務の仕組みがほとんど決まっているため、業務が「作業」になりやすく、モチベーションが下がってしまうこともあります。
中小企業・技術派遣会社に就職⇒大企業に転職
① メリット
中小企業で働くメリットには、設計だけでなく製品開発の幅広い業務に携われることがあります。
設立から間もないベンチャー企業などでは企画から生産までを数人のチームで行っていることもあり、大手企業では出来ない経験を得ることが出来ます。転職市場では大手企業で限られた業務をするよりも中小企業で様々な経験を積んだ方が実績も残しやすく有利です。
また技術派遣会社では複数の大手企業を相手に派遣・請負業務を行う業務形態であるため、退職というリスクを経ずに複数の大手企業での経験を得ることや、自分に合わない派遣・請負先であれば変更出来ることが大きなメリットです。
② デメリット
景気が悪化すると希望の企業に転職出来ない場合があります。
最近ではリーマンショックから数年は転職先の企業が激減していましたし、これから数年間も新型コロナウィルスによる影響による転職企業の激減が予想されます。転職が一昔前よりも一般的になったとはいえ、あまり年を重ねると転職が難しくなることに変わりはありません。運悪く自分の転職のリミットの年齢が景気の悪化と重なってしまうと給与の少ない中小企業や技術派遣会社で一生働くリスクもあります。
ただ機械設計職は人手不足の企業が多く、年中募集をかけているような企業もあるためあまり心配し過ぎる必要はありません。いずれにせよ将来的に転職を考える企業があるのであれば常に転職希望先の求人はチェックしておくようにしましょう。
学生時代に準備すること
機械設計職を目指す学生が、学生時代のうちに準備するべきことにはどのようなものがあるのでしょうか?
必要な知識の習得
学生のうちに勉強するべきなのは、どの企業でも機械設計職であれば必須な4力学(材料力学、流体力学、熱力学、機械力学)です。
勉強することにモチベーションが上がらない人は、会社によっては評価される資格の取得を目標にすることがお勧めです。
日本機械設計工業会が実施している「機械設計技術者試験」の3級が学生向けの資格となっており、幅広い4力学の基礎を学ぶには最適です。
ただし知識の習得は入社後に実務をやりながらでも十分可能ですので、学生のうちに専門知識の勉強をすることは必須ではありません。
コミュニケーション力の向上
機械設計職が学生のうちに学んでおくべき最も重要なものに「コミュニケーション力」があります。
機械設計職は設計他部署や客先との打合わせや調整業務が多く、対人のコミュニケーション力が必須条件です。
ただしここで挙げた「コミュニケーション力」とは、アルバイトなどを通して身に着ける「対人能力」に限ったものではなく、「物事を論理的に相手に説明する力」のことでもあります。
これは卒論などの「自分で問題を考える授業」などでも身に着けることが出来ますので、これから機械設計職を目指す学生は、教授への説明やプレゼンなどの時に論理的な説明をするように意識してみましょう。
まとめ
機械設計職者は幅広い知識が必要なうえ、一度習得した知識でも新しい工作機械や材料、規格、法律などが出る度に更新する必要があり、一生勉強していく必要があります。
しかし苦労して開発した製品が世に出ると、他では得ることが出来ない充実感を感じることが出来る非常にやりがいのある仕事です。
この記事がこれから機械設計職を目指す方の参考になれば幸いです。