【仕事研究】機械メーカの電気設計職?!電気メーカでの設計とどう違うの?
電気を扱った設計と言えば、東芝や三菱といった大手電気メーカでの設計職を思い浮かべる学生さんも多いのではないかと思います。また、IT関連では富士通やNECなど電気通信システム設計のメーカなどもあるでしょう。
では、機械製造を行う機械メーカでも、電気設計職を募集していることをご存知でしょうか?
今回は、そんなあまり知られていない機械メーカでの電気設計職について説明します。
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電気設計職を求めているのは電気メーカだけではない!
電気系の学科や専攻を卒業すると、当然のことのように電気メーカやITの専門メーカを志望する人がいますが、自分の学問はもっと様々なところに活用されているという目で見てみましょう。
機械製造を行う機械メーカでも、機械を動かすために電気を必要とします。工作機械では、正確な位置に鋼材に穴を開けるために寸分の狂いもない精度が求められます。
こうした精度は現在電気計装機器の組み合わせで実現しています。
他にも、大型機械の動力を問題なく供給するためには、末端のモータまで大電力をどう供給するかという送電の知識も必要となります。
こうした問題を解決するためには、機械の構造をある程度理解した電気設計職という特殊な立ち位置の技術者が必要となってきます。
こうした技術者になるのにも、大学や大学院時代の電気分野の専門知識がベースとなることは言うまでもありません。
機械の構造はメーカごとに異なるが、電気の知識は共通
機械系のメーカは国内に無数に存在します。それぞれの需要別に特徴を持った機械を販売しています。これらの機械に関するノウハウはメーカごとに異なるため、入社してから学習しても遅くはありません。
ここで重要なのは電力を供給する方法や、制御を行う機器などはそこまで大きな違いはないという点です。中には機械メーカでオリジナルの制御機器を開発しているようなケースもありますが、制御方法は共通の場合が多いです。
つまり、電力工学や制御工学、機械を外部から遠隔操作するような場合は通信工学などといったベースとなる学問は、機械メーカどこにいっても共通の知識となるということです。
IoTでIT技術者も機械メーカで採用増となる??
最近のトレンドとして、モノとインターネットを接続するIoTがIT業界で話題となっています。
モノという中には、当然機械も入ります。機械業界でもIoTに関するビジネスチャンスが到来しようとしています。
工場向けの機械ではインターネットに接続して、機械稼働時間などの細かいデータをサーバに蓄積して、どう動かせば効率的になるのかといったことを考える「スマートファクトリー」という概念が提唱されています。
これを実現するためには機械の特性を知っていてIT関連の知識もある技術者が必要となります。
近年システムインテグレータでもこうしたスマートファクトリーのコンサルティング業務を開始していますが、機械の性能や特性をあまり理解していないと上滑りのような議論となってしまうことが多いです。
こうした場に機械メーカのIT技術者が登場してくれば、現場で機械を動かす担当者がどんなことを考えているのか、どういったことを重要視しているのかをシステムに反映することができやすくなります。
機械系メーカでもIT技術者の需要が出てくるというのは大きな時代の変化と言えるでしょう。
電気と機械の複合技術者というのは少ない
電気設計だけをやるという電気技術者は多く存在します。機械設計だけをやるという機械技術者も同様です。しかし、専門的に深く学んだ分野が一つあって、機械や通信などの概要だけでも理解できる技術者というのは少数になります。
それは、企業内でも重宝され、転職しやすいということにもつながります。
専門外の知識をつけるのは大変
自分の専門である分野の知識を大学院などで修得するのは並大抵のことではありません。多くの時間と努力を必要とします。自分の専門知識を生かして、会社に入ってからは勉強しなくてもいいということではありません。大学院で修得した知識は卒業した時は最先端だったとしても、時間とともに新しい技術がどんどん出てきます。
さらに大学院では自分の専門外のことをやることはほとんどなかったという人も多いでしょうが、会社に入ってからは異分野の知識も必要となる場合もあります。
機械加工や通信技術などはやったことのない人にとっては未知の分野でしょう。この場合、重要な要素だけでも理解する必要があります。その時に重要なのが専門学問を決める前に修得した高校時代の物理や化学といった基礎科学です。ここに戻って考えてみると言うことも重要です。
専門外の知識を要素だけでも理解するにはある意味「学びなおし」のようなことを行う必要が出てきます。
これは骨が折れる作業です。
会社は機械メインのため、機械技術者が評価されることも…
機械メーカはその名の通り機械がメインの会社です。機械系を専攻した設計者が多くいて、上司となる人もそういった人かもしれません。電気の知識を入れた仕事で業績を上げても理解されないため、評価が低いということも出てくるでしょう。
会社に派閥のようなものがある場合、こうした傾向は顕著に出るかもしれません。
そんなに苦労して様々な知識を取り入れても、そこまで評価されないのならやっても意味がないかなと考えた方は、ちょっと早計です。
知識はうそをつきません。どこの会社に行っても同じような電気の知識で業務が進められています。これは大手機械メーカであっても同じです。
また、電気と機械の知識を習得した複合技術者の数も少ないということもあり、活躍の場が制限されると言うことはありません。
数が少なくても、潜在的な需要が多いため転職市場でも有利に働くということを意味します。
もう限界だ!と思ったら転職も可能
これから新卒で社会人になる方は、常に「転職」を考えて仕事に当たるということが重要になってくるでしょう。
一つの会社で頑張るというのも重要ですが、新型コロナウイルスによるテレワークや、自然災害など、自分の意図としないことで会社の状況が変化することは不思議ではありません。
また、電気、機械メーカ問わず、大手企業であればあるほど、その会社でしか通用しないスキル(独自の社内システムが充実しているため一般化されないものなど)が多くなります。
長年大手電気メーカで、電気設計職だけを行ってきたという経歴もそれは立派ではありますが、そうした人材は年齢問わず多く存在し、同じ募集でも競争相手が多くいます。
機械メーカで、機械を動かすための電気関連の業務を全てに当たってきたという場合はどうでしょうか?
内容にもよりますが、同じ募集でも競争相手が少数になることが想像できると思います。
こうした転職市場で有利になるように仕事をするためには、本質をとらえた業務を行うことが重要です。
本質をとらえるために重要なものは、時代が流れても変わらない普遍的なもの、つまり学問をしっかり修得することが転職でも有利となる礎になります。
人とはちょっと違う道を行くことで出るオリジナリティ
電気を専攻したのに機械メーカに行くなんていうと他の学生などから「どうしてそんな選択をするんだ?」と言われるでしょう。
しかし、ここにも書いた通り、その選択に至るには十分すぎる理由があります。
IoTなどは10年前には誰も考えていなかったことです。これから先もそういった業界のトレンドはいくつも来ることでしょう。
この時に重要なのが、トレンドの基礎となった学問が必ず存在するということです。IoTであれば通信技術の発達です。その基礎には通信工学があります。
量子コンピュータやAIなどもそれと同列にあるでしょう。
これから先にどんな災難が待っているかもわかりませんし、どんなビジネスチャンスが訪れるかもわかりません。
こうした時に、評価されなかったら転職を考える、新技術を活用した設計を行う、と言ったことに重要なのが様々な分野の専門知識を持つということになります。
電気を専攻したら電気メーカに就職する、というのは、みんなが選択する選択肢で、安心かもしれません。しかし、これだけ価値観がすぐに変化する現代では、それだけではない自分にしかできない何かを探し続ける必要があります。
それは、自分ブランドを作るオリジナリティになっていき、転職や独立などにもつながっていくのではないかと考えます。