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数理とリスクの専門家「アクチュアリー」の仕事とは?理系の数学力、論理的思考力を活かす

皆さんは「アクチュアリー」という仕事をご存じでしょうか?
アクチュアリーとは、年金や保険のスペシャリストのことで、その多くが生保や損保などの保険会社や信託銀行などの金融機関に在籍しています。

ここでは、具体的にどんな仕事なのか、どういう人達が働いているのかについてご紹介していきます。

アクチュアリーとは、不確実性に対応する社会の機能を担う、数理とリスクの専門家

年金や保険の社会的機能とは

 年金や保険は、学生の皆さんにはまだあまり触れることが少ないかもしれませんが、近い将来ご自身でも考える必要のあるものです。年金や保険は、金融機関が扱う商品・サービスの中でも契約期間が長期にわたるという特徴があります。

 年金や生命保険は、人の一生にわたるサービスであり、退職や病気、死亡といった不確実性に備えるための商品です。また損害保険は、契約期間中に起こりうる事故や損失に備えるためのものです。このように長期間にわたる将来の不確実性への備えを提供する年金や保険は、社会にとって不可欠な社会的機能を担っています。

アクチュアリーの役割

  この社会的機能を担うには、将来の不確実性を捉える的確な分析が不可欠です。この分析を行い、制度を設計・運営するのがアクチュアリーの役割です。すなわち、アクチュアリーは、不確実性に対応する社会の機能を担う、数理とリスクの専門家なのです。

アクチュアリーってどんな人たち?

アクチュアリーの人数

 アクチュアリーの人数は、全国におよそ5000人、そのうち年金や保険を扱う公的な資格の保有者は全国で1800人と、非常に少数です。

アクチュアリー資格試験 

 資格試験は、日本アクチュアリー会が主催しており、一次試験の科目は「数学」、「生保数理」、「損保数理」、「年金数理」、「会計・経済・投資理論」の5科目になります。一次試験の合格者はさらに二次試験を受ける必要があり、二次試験に合格するとアクチュアリーの正会員になります。

一次試験の合格率は約10%と非常に難易度の高い試験です。

 アクチュアリーの資格取得には、難易度の高い資格試験に合格する必要があります。資格試験では、数学、なかでも確率統計の知識、年金や保険の制度の知識を問われます。そのため、アクチュアリーになるためは、高度な数学的素養を身に着けている必要があります。実際にアクチュアリーには数学科出身の方が多く存在します。多くの場合、就職後に会社が提供するカリキュラムで勉強し、資格を取得しています。また、アクチュアリーは人数が少ないため、資格保有者に特別手当を支給する会社が多く、年収も高い傾向にあります。

アクチュアリー試験対策:参考書・過去問

アクチュアリーの資格試験対策として、教科書や参考書、過去問があります。これらは日本アクチュアリー協会のHPに掲載されているので、必ず対策をしておきましょう。

▼教科書・参考書一覧

  http://www.actuaries.jp/examin/2020exam/2020-B1.pdf http://www.actuaries.jp/examin/2020exam/2020-B1.pdf


▼過去問一覧

  資格試験過去問題集|公益社団法人 日本アクチュアリー会 http://www.actuaries.jp/lib/collection/index.html



アクチュアリーってどんな仕事しているの?


アクチュアリーの業務の中身を見てみましょう。

年金の場合

 年金の場合、顧客は企業です。企業は、自身の従業員の引退後のために年金制度を用意します。この年金制度の設計・運営のお手伝いをするのがアクチュアリーの役目です。

 年金制度では、将来の退職者への支払いに備えて、積立金を用意しますが、その金額がどの程度必要か算定することが求められます。積立金の水準が適正か、定期的に顧客や監督官庁に報告するための計算の担うのがアクチュアリーです。

生命保険・損害保険の場合

 生命保険や損害保険の場合、顧客は企業だけではなく、個人も含まれます。自動車保険や生命保険、医療保険などは社会人になると身近なものとして触れる機会も多くなると思います。この場合も年金同様に、制度の設計・運営を担い、定期的に積立金の状態をモニタリング、報告するのがアクチュアリーです。


 実際の計算では、年金・保険制度関連の過去実績データを収集、数理的に分析し、将来の事象を予測、将来に発生する支払いの現在価値を算出します。ここでは確率論や統計学の知識がフル活用されます。また、年金も保険も、制度の内容と顧客のニーズを深く理解することが求められます。その上で、積立金の水準や制度の財政状態を算出・分析するためには、数学の知識、計算・プログラミングの技術が不可欠です。また、計算を正確に行うため、複数名で計算・チェックの作業にあたるので、チームワークも求められます。そして、顧客や監督官庁への説明の機会もあるので、プレゼンテーションやコミュニケーションのスキルも重要です。


 さらに、顧客が企業の場合、年金や保険の積立金の計算結果は、企業の財務諸表に反映されます。そのため、企業会計制度の知識も必要です。また、年金も保険も、将来の支払いに備えるための積立金の資産運用が必要です。資産運用は運用の専門家が担うのですが、運用の結果は年金・保険制度の財政に影響します。アクチュアリーも自身が設計・運営する年金・保険制度の資産運用について理解しておくことが求められます。


 アクチュアリーの中には、コンサルタントとして活躍する方も多く存在します。コンサルタントの場合は、より一層、顧客のニーズをくみ取る力、プレゼンテーションやコミュニケーションのスキル、関連する会計制度、資産運用の知識など、高度な総合力が求められます。

アクチュアリーの仕事をやってよかったことは?


 私自身は年金制度の設計・管理運営と、コンサルティングを担当してきました。最初に業務に携わったときは、高校生の時に数学で学んだ行列、ベクトル、数列、統計などが、実際に使われていることに驚きました

 アクチュアリーは数学知識を実際の社会経済のためにフル活用する仕事なのだ、と実感したことを覚えています。自身の数学知識や計算技術を生かして、社会に貢献できているという実感を得ることができるアクチュアリーという仕事は理系にはとても魅力的です。また、仕事を通じて、確率論的な思考、時間軸でものを考える習慣、異時点間の金銭価値を比較する視点など、学生時代は持ちえなかった思考方法を身に着けることができたと思っています。

思考方法は、アクチュアリー以外の業務においても、実社会で物事を論理的に考え、捉えるうえで大きなアドバンテージであると日々実感しています。

アクチュアリーに興味のある学生の皆さんへ


ご自身の数学知識、論理的思考力が強みだと感じている方、社会経済の仕組みに興味がある方、ぜひ、アクチュアリーの業務を通じて、ご自分の数学力、論理的思考力を活かし、社会に貢献する実感を得てください。

数学力、思考力だけでなく、人間としても大きく成長する機会が待っています。皆さんが活躍され、成長し、社会に貢献されることを楽しみにしています。

M.O

M.O

金融機関にて金制度の設計・管理運営と、コンサルティングを担当

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