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「できること」より「やりたいこと」を。理学系からモーターサイクルの設計エンジニアへ

「メーカーの設計職は、機械系や工学系出身でないと難しいのでは?」

そんなイメージを持っている理系女子学生も多いかもしれません。

今回お話を伺ったのは、ヤマハ発動機でモーターサイクルの外装樹脂部品の設計を担当する佐々木さん。大学では理学系の大気化学を専攻し、CADを使った経験もなかったという佐々木さんが、なぜモーターサイクルの設計エンジニアを目指したのでしょうか。

就職活動で大切にしたことやインターンシップでの経験、現在の仕事内容、そして理系女子学生へのメッセージまで、詳しく伺いました。

見た目だけじゃない。ライダーを守る「外装樹脂部品」を設計

Q.現在はどのようなお仕事をされていますか?

モーターサイクルの「外装樹脂部品」の設計をしています。

外装樹脂部品とは、モーターサイクルを外から見たときに見える、プラスチック製の部品です。

車両の商品価値を高める装飾部品という役割だけではなく、風や水、熱などからライダーを守るという機能も持っています。

設計では、品質を第一に考えつつ、納期やコストなどとのバランスを取りながら製品を作り上げていきます。

Q.「設計」というと、図面を描く仕事をイメージします。実際にはどんなことをするのでしょうか?

形を作ることはもちろんですが、求められる機能に応じて「この樹脂を使った方がいい」と材料を選定することも設計者の仕事です。

また、デザイナーが描いたスケッチをもとに、「部品をどこで分割するか」「車体にどう固定するか」といった全体の構成も考えていきます。

その際には、周辺部品との隙間や組み立てやすさ、製造するときの成形性など、本当にたくさんのことを考慮しなければなりません。

何か一つを良くすると、別の部分がうまくいかなくなることもあります。そのため、関係する部署の人たちと話し合いながら、最適な形を探していくことも設計者の大切な仕事です。

Q.一つのモーターサイクルの外装を、一人で設計するのですか?

一人ですべてを担当するわけではありません。製品にもよりますが、一つの車両の外装部品を4~5人程度で担当しています。

「前側」「後ろ側」「下側」というように担当を分けながら、一つの車両を作り上げていきます。担当する場所は固定ではなく、車両によって変わります。

設計で難しいのは、技術だけではなく「最適解」を見つけること

Q.外装樹脂部品の設計で、難しいと感じるのはどんなところですか?

自分で考えて、自分一人で解決できることばかりではないところですね。ほとんどの案件で、いろいろな人と合意形成しながら進める必要があります。

もちろん、みんな「良いものを作りたい」という思いは同じです。ただ、それぞれ立場が違うので、意見がぶつかることもあります。

その中で最適解を見つけていくことに、設計の難しさを感じます。

Q.設計では、どんな部署の方々と関わりますか?

かなり多くの部署と関わります。デザイナーはもちろん、周辺部品の設計者、製造技術、品質保証、サービス、実験、調達、コスト開発など、本当にさまざまです。

開発のどのフェーズにいるかにかかわらず、いろいろな人と一緒に仕事をします。


自分が設計した部品が、世界中のお客様の目の前に

Q.これまでに、佐々木さんが設計した部品が実際に製品になったことはありますか?

あります。

最初に担当したのは、スポーツバイクの後ろ側の外装でした。その車両が初めてお披露目されたのが、世界最大級のモーターサイクルの展示会「EICMA(ミラノショー)」でした。毎日ずっと担当部品を見ながら仕事をしているので、だんだん愛着が湧いてくるんです。

それが実際の製品になり、お客様が写真を撮ったり、車両にまたがったりしている姿を見たときは感動しました。「本当に製品になったんだ」「ちゃんとお客様に届いているんだ」と実感できて、すごくうれしかったですね。

Q.外装設計ならではの面白さは何でしょうか?

自分が設計したものが、完成したときに外から見えることですね。

普段は3D CADのデータ上で形を作っていますが、試作の段階になると、それが初めて実物として目の前に現れます。そこで、自分が狙った通りに機能していることを確認できたときは、「よっしゃ!」と思います(笑)。

理学系から設計職へ。「できそうなこと」で探す就活にワクワクしなかった

Q.大学では大気化学を専攻されていたそうですね。そこから、なぜモーターサイクルのエンジニアを目指したのでしょうか?

もともと自動車が好きだったことが大きいですね。

モーターサイクルには乗っていなかったのですが、子どもの頃からMotoGPを見ることが好きでした。特にバレンティーノ・ロッシ選手の大ファンで、家族みんなで応援していました。

ただ、就職活動を始めた頃は、自分の専攻から「できそうな仕事」を探していたんです。SEなど、理学部出身者が入りやすそうな企業を中心に見ていました。

でも、いろいろな会社の説明会に参加しても、全然ワクワクしなかったんです。そこで働いている将来の自分も、なかなかイメージできませんでした。そこで一度、「できそうなこと」ではなく、「自分がやりたいこと、好きなことから探してみよう」と考え方を変えました。

すると一気に視野が広がって、もともと好きだった自動車やモーターサイクルのメーカーにも目を向けるようになりました。

Q.その中でヤマハ発動機に興味を持った理由は?

会社説明会などを通して、私は2輪メーカーに「自分たちでものづくりをしている」という印象を持ちました。

4輪メーカーと比べると規模がコンパクトで、少数精鋭のプロ集団でものを作っているように感じ、「この中でチャレンジしてみたい」と思ったんです。

そして、ずっと応援していたロッシ選手が長年ヤマハのライダーだったことも大きかったですね。

「4輪・2輪メーカーに行くなら、ヤマハに行きたい」と思うようになりました。


「入ってからが重要」。インターンで不安がやる気に変わった

Q.理学系から工学系の学生が多い設計職を目指すことに、不安はありませんでしたか?

ありました。

ヤマハ発動機のインターンシップに参加したときも、周りは工学系の学生ばかりでした。そこで社員の方に相談したところ、「入ってからが重要。努力次第でどうとでもなるよ」と言っていただいたんです。単純かもしれませんが、その一言で不安がやる気に変わりました。

そこからはあまり思い悩まなくなったので、インターンシップに参加して本当に良かったと思っています。

Q.インターンシップではどんなことを経験しましたか?

モーターサイクルの車両運動解析というテーマでした。

車両の運動について机上で考えたことを、実際にシミュレーターで体感しました。やってみると、予想通りの結果ばかりではありません。「こうなるんだ!」ということもあれば、「あれ、こんなものなの?」ということもありました。

予想と違う結果が出たら、「なぜそうなったんだろう」と考えて、また検証する。そのプロセスがすごく面白かったです。楽しくて、あっという間に終わりました。

Q.インターンシップは、ヤマハ発動機への入社を決めるきっかけにもなりましたか?

そうですね。最終的な決め手の一つだったと思います。

インターンシップでは、社員の方が住んでいる寮に滞在し、そこから毎朝出社して、月曜日から金曜日まで過ごしました。実際の生活に近い経験をしたことで、「ヤマハ発動機で働く自分」をイメージできたんです。

それまでの就職活動では、働いている自分の姿をなかなか想像できませんでした。でもヤマハではそれができた。

「ああ、もうここだな、ここにこのまま就職したい」と思いました。これは私だけの意見ではなくてインターンシップに参加したメンバーがみんな言っていましたね。それぐらいインターンシップでの体験が貴重でした。

CAD経験ゼロからのスタート。分からないことは「分からない」と言えばいい

Q.大学時代にはCADを使った経験がなかったそうですね。入社後は大変ではありませんでしたか?

CADはまったく使ったことがありませんでした。入社後、配属されてからCADの研修や関連する技術講座を受講して勉強しました。研修では、周りの工学系出身の人たちと比べると、かなり遅れていると感じることもありました。

でも、それは仕方のないことなので、ある意味開き直っていましたね(笑)。一人で頭を抱えて「もうどうにもならない」という状況になったことはありません。

分からないことを「分からない」と正直に言えば、周りの方が教えてくれます。そうした環境に助けてもらいながら、少しずつ知識を身につけていきました。

Q.大学で学んだことが、現在の仕事に生きている部分はありますか?

専門知識を直接使うことは、ほとんどありません。

ただ、「何が起きているのか」「原因は何なのか」「次に何をすればいいのか」と順番に考えていく思考のプロセスは、大学時代にも培ってきたものだと思います。

一方で、学生時代の研究と仕事では、求められるレベルが違うとも感じます。資料の作り方や人への説明など、何をとっても一段上のものが求められます。

だから、「大学で経験したことをそのまま生かさなければ」と、そこまでこだわらなくてもいいのではないかと私は思っています。

希望とは違った「設計」への配属。でも、やってみたら面白かった

Q.入社当初から外装設計を希望していたのですか?

実は違うんです。

配属希望は聞かれましたが、私は研究部門を希望していました。なので、設計への配属が決まったときは「私にできるかな」と思いました。

でも、研修を終えてOJTが始まり、実際の業務に入ってみると、これが面白かったんです。すごくやりがいを感じました。

私は入社してからずっと外装設計に携わっています。

周りにはローテーションで違う部署を経験する人も多いのですが、私は今の仕事に面白さとやりがいを感じていますし、いろいろなことを器用にこなすというより、一つの場所に腰を据えて、一つの役割を極めていく方が自分に合っていると思っています。

上司もそうした考えを理解してくださって、これまで外装設計を続けてきました。


女性が少ない環境でも、「女性だから」と意識することはない

Q.女性エンジニアとして働いていて、感じることはありますか?

外装設計では、女性は1割もいないと思います。大学は地球科学系で、男女が半々くらいだったので、それに比べると女性はかなり少ない環境です。

ただ、仕事をする中で「女性だから」と感じたことは特にありません。不便だと思うこともないですね。

学生時代にもっとやっておけばよかったのは「英語」

Q.もし大学時代に戻れるとしたら、「これをもっとやっておけばよかった」と思うことはありますか?

一つあります。英語です。

仕事では海外拠点とやり取りする機会も比較的多く、英語力が必要になります。直接話す機会だけではなく、メールでやり取りすることも多いです。「もう少し英語力があったら、もっと早くメールを書けるのに」と思うことがあります。

今は翻訳ツールなども活用して、翻訳した文章を自分で手直ししながらメールを作ることもありますが、時間のある学生時代にもう少し勉強しておけばよかったですね。

「できること」だけで、自分の可能性を狭めないでほしい

Q.「メーカーのエンジニアは工学系じゃないと難しい」と思っている理系女子学生に、伝えたいことはありますか?

一つだけ伝えるなら、「できること」より「やりたいこと」を優先してほしいです。

「今の自分にできること」だけに絞って就職先を探してしまうと、もったいないと思います。自分で自分の可能性を狭めてしまう気がするんです。

だから、できるかどうかは一度置いておいて、「自分は何がやりたいんだろう」「何が好きなんだろう」ということにフォーカスしてみてほしいです。

Q.「やりたいことが分からない」という学生は、どうしたらいいでしょうか?

いろいろな人と話して、いろいろな経験をしてみることだと思います。私自身、就職活動で悩んでいたときには、いろいろな人に相談しました。

学生時代にスポーツジムでアルバイトをしていたのですが、ジムの会員さんにも話を聞いていました。全く違うバックグラウンドを持つ人たちの人生の話を聞くと、得られるものがたくさんありました。

紙に自分の考えを書き出して、連想ゲームのように「好きなこと」を広げていくこともやっていました。

そして、インターンシップもすごく良い経験だと思います。

「絶対にこの会社に就職する」と構えすぎず、気軽に参加してみて、「自分はここでワクワクするのか、しないのか」という判断基準でもいいと思います。

とにかく、いろいろ経験してみることが大切だと思います。

これからは、外装設計で培った経験を別の製品にも

Q.今後、エンジニアとして挑戦してみたいことを教えてください。

将来的には、外装樹脂部品以外の部品設計も経験してみたいと思っています。

ヤマハ発動機では、ローテーションで一度別の部署を経験し、また元の部署に戻るというキャリアもあります。

別の製品の設計を経験して、外装設計に戻ってきたときに、その経験を生かせたらいいですね。

理系女子学生へのメッセージ

Q.最後に、学生の皆さんへメッセージをお願いします。

ヤマハ発動機は「職場の雰囲気がいい」と話す人が多いのですが、私もそう思います。

技術系の職場というと、一人ひとりが自分の仕事に集中していて、少し静かなイメージを持つ人もいるかもしれません。

もちろん、それぞれ仕事には集中していますが、殺伐とした雰囲気ではなく、居心地の良さを感じています。

ぜひインターンシップなどに参加して、実際の雰囲気を経験してもらえたらと思います。

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