【イベントレポート】大成建設技術センター見学会 2019年3月8日開催
2019年3月8日、理系女子学生対象に大成建設技術センターで開催された見学会の様子をレポートします。
みなさんは、「大成建設での仕事」と聞くと何を想像しますか?
ゼネコンですので、トンネルやダム、高層ビルなどの設計や施工管理などの仕事を想像する方が多いと思います。
もちろん、そういった仕事が主ではありますが、横浜にある「大成建設技術センター」では、最先端の機器や装置を備え、建築・土木以外にも様々な分野の研究員が、多岐にわたる研究に取り組んでいます。
3万平米を超える広大な敷地の中には、13もの研究施設がありますが、今回のイベントでは、そのうち、ZEB実証棟、建設ICT実験棟、防耐火実験棟、水理実験棟、次世代研究開発棟を見学させていただきました。
省エネから、ゼロエネへ。を実現するZEB実証棟
ZEB実験棟の「ZEB」とは、建物で消費するエネルギーを極限まで少なくし、さらにエネルギーを作り出す設備を持つことで、年間のエネルギー収支がゼロとなる建物のことです。
大成建設では、2020年までの「ZEB化技術の普及拡大」を目指し、ZEB実証棟を完成させました。そして、2014年の運用開始から現在に至るまで、建物単体での年間エネルギー収支0(ゼロ)を達成しました。
ここでの実証実験のデータは、日本のみならず世界的にも希少な先進事例として地球の環境問題への解決にとても役立っているそうです。
実は、日本で消費するエネルギーの内、約40%はオフィスなどで使われています。すなわち、ビルのゼロエネルギーを実現することは、二酸化炭素の排出量も削減されることになります。ZEB化技術は、エネルギー問題や地球温暖化問題の解決に大きく前進することができるとても重要なものなのです。
「省エネ」と聞くと頑張って我慢してエネルギーを節約しているのかと思われがちですが、ここでは、快適で最適な「省エネ」ができるように様々な技術が使われていました。
▼パネルやポータブルディスプレイを使用してZEBを実現するための技術を詳しく説明していただきました。また、建物の側面に使用されている「有機薄膜太陽電池外壁ユニット」にも実際に触ることができました。
▼年間を通して様々な太陽高度の直射日光を採光可能にした「T-Light Cube」や人検知センサーで人の存在を判断して制御する「低照度タスク&アンビエント照明」、自分好みの風量選択と在席情報により外気量を制御する「排熱利用タスク&アンビエント空調システム」など、消費エネルギーを最適に制御できるシステムが採用されています。実際にオフィスで使用されている様子を見学することができました。
▼大地震時の安全性と中小地震時の安心感を確保する「都市型小変位免震」を実際に見ました。これはZEB実証棟の免震層で採用されていました。
建設現場でロボット活用の実用化を目指す建設ICT実験棟
建設ICT実験棟では、無人施工が可能なロボットや、災害現場で無人で動く重機などの実験が行われています。
建築の分野では、床コンクリートを均すロボットやお掃除ロボット、鉄筋結束ロボットなど、
また土木の分野では、無人で砕石作業を行う重機などが、実際の現場で活躍しています。
例えば、無人の重機は、土砂災害などで大きな岩などが散乱し作業の妨げになる場合に、リモコン操作でその場まで行き、岩を砕き、その後の作業をしやすくする、といった用途で活躍しています。
大成建設は、このようなロボット開発をメーカーと共同で行っています。ゼネコンがこういった開発にも関わっているなんて、とても驚きでした。
暮らしの安全を支える上で重要な防耐火実験棟
防耐火実験棟では、実際の建物の荷重を柱にかけた状態で耐火実験ができる大きな実験装置があります。
ここではこれらの装置を使用して、構造物が長時間の火災に遭遇した場合に生じる部材への影響や耐火性能を実験・解析しています。
建物だけではなく、トンネルの内部を再現し、トンネル火災時の耐火実験なども行っているそうです。このような実験・検証を重ねるおかげで、私たちは安心して暮らせているのだと感じました。
水の力を知るための水理実験棟
水理実験棟にある津波造波装置では、津波が防波堤や建物に作用する力を高い精度で再現することができます。見学では、ポータブルディスプレイを使って、実際に実験している様子を見ることができました。
またここでは、海洋構造物に対する潮汐・波・流れの影響を検証する実験も行われています。このような実験・検証は、海・河川・湖沼等における建設工事で施工法を検討する際にとても重要な役割を担っています。
様々な研究が行われている次世代研究開発棟
次世代研究開発棟は2018年に材料実験棟を全面リニューアルして生まれ変わった施設です。
ここでは、緑化実験室や化学分析室などがあり、材料・環境分野への研究・開発が行われています。化学や農学といった建築・土木分野以外の研究員の方も働かれているそうで、実際に施設を見学していると、大学の理学部に来たように感じました。
VR技術を応用することで、意思決定・合意形成が速やかに
建設業においてもVR(Virtual Reality)技術が活用されています。大成建設では、建物完成時の様子をリアルに再現できるHybridvision(ハイブリッドビジョン)を開発しました。
このシステムを使うことによって、建物の内部空間のイメージを確認するだけではなく、気流、光、音のシミュレーションを3Dで体感することができます。そのため、空間イメージを共有できるので、発注者との意思決定・合意形成が速やかになります。
実際に私達はそのシミュレーションを体験しました。また、ボスポラス海峡横断鉄道の施工技術を見ながら、海峡横断鉄道が線路上を進む様子をバーチャル体験もすることもできました。
技術センターで働く女性研究員との座談会
風や熱のシミュレーションを行っている研究員。
地震に対する建物の評価を行っている研究員。
微生物を使った地下水や土壌汚染を浄化する研究を行っている研究員。
3名の女性研究員の方にお越しいただき、お話を聞くことができました。
参加した学生からも様々な質問が出て、進路のこと、実際の研究のこと、学生時代の研究との違い、などのお話を聞くことができました。
イベントに参加して
今回参加いただいた学生からは、「楽しかった」という声が多く聞こえました。また、建築業界に対して「魅力的だ」「楽しそう」と思っていただけたようです。
いくつか参加者の声をご紹介します。
「開発現場を実際に見ることができて楽しかった。」
「建設に関わる分野だけでなく、環境への取り組みや研究もされていることを初めて知ることができて良かった。」
「今回見学できなかった他の施設もじっくり見てみたいと思いました。」
「働き方や需要などの時代の変化に対し、大成建設は常に次の時代を見ていて魅力的に感じました。」
このイベントを通して一人でも多くの方が、建設業界に興味を持っていただければ、とても嬉しく思います。
最後に素敵なイベントを開催していただきました大成建設株式会社様、ありがとうございました。