オリジナル薬の研究開発にこだわり、世界の人びとに貢献するキッセイ薬品工業、その魅力に迫る!
キッセイ薬品工業株式会社(以下「キッセイ薬品」)は長野県松本市に本社がある製薬会社です。新薬の研究拠点となる研究所は長野県安曇野市と新潟県上越市にあります。
今回、長野県安曇野市の中央研究所に所属し、「患者さんのために」との想いを胸に、「創製品」と呼ばれるオリジナル薬の研究に注力する女性研究者の方々に、仕事の内容や、やりがい、研究職としての働き方についてインタビューしました。みなさんも研究開発にかけるキッセイ薬品の想いを感じてください。
キッセイ薬品ってどんな会社?
オリジナルの薬で世界の患者さんに貢献
キッセイ薬品は、「純良医薬品を通じて社会に貢献する」「会社構成員を通じて社会に奉仕する」という経営理念を掲げています。「純良医薬品」とは、有効性・安全性に優れ、かつ高品質であるとともに、適正使用のための情報も伴った医薬品という意味が込められている言葉です。
「世界の人びとの健康に貢献できる独創的な医薬品を開発し提供する創薬研究開発型企業を目指す」という経営ビジョンからもわかるように、創製品・創薬に力をいれている会社です。
その創製品の研究開発の拠点となるのが中央研究所。長野県の安曇野市に位置し、北アルプスの麓の自然豊かな環境で、研究が進められています。
創製品 排尿障害改善薬「ユリーフ」(一般名:シロドシン)
キッセイ薬品の代表的な創製品の一つに、排尿障害改善薬「ユリーフ」があります。α1受容体拮抗薬(α1ブロッカー)に分類される薬剤で、「ユリーフ」は、前立腺のα1A受容体サブタイプを選択的にブロックすることにより、前立腺の緊張を取り除いて尿道抵抗を改善し、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善するという特徴を持った薬剤です。
2006年の日本での発売以降、世界59ヵ国で発売され、2018年に物質特許、医薬品の有効成分の特許が満了しました。特許が満了すると、後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品が発売されます。
現在、先発品・後発医薬品合わせて、α1ブロッカーが処方されている国内の前立腺肥大症の患者数は、年間約350万人と推定され、そのうち44%と、多くの患者さんにシロドシンが処方されています※。
※Copyright © 2022 IQVIA. 出典:IQVIA 医薬品市場統計2021.10-12 をもとに自社集計、無断転載禁止
上の図は、医師を対象とした疾患の治療満足度と薬剤貢献度調査の結果を示しています。赤い矢印の推移に示されるように、新薬の発売とともに患者さんの治療に対する医師の満足度が改善・向上し、薬剤貢献度も向上しています。
特に2006年の「ユリーフ」(シロドシン)の発売以降、薬剤貢献度が急激に上昇しています。
このように、新薬の発売は、患者さんの疾患の治療に貢献するだけではなく、患者さんの満足度にもつながります。
キッセイ薬品では、「ユリーフ」に続く創製品である子宮筋腫治療薬「リンザゴリクス」(一般名)が欧米で申請されるなど、「創製品」の提供を通じて世界の人びとの健康に貢献するため、独創的な新薬の研究・開発に挑戦し続けているのです。
では、実際にどのような方が研究開発しているのでしょうか。理系女子学生がインタビューしました。
社員インタビュー
キッセイ薬品社員紹介
吉田さん:薬学研究科卒。研究本部 合成研究所合成研究グループ 副主任研究員 創薬合成研究を担当
米窪さん:医歯薬総合研究科卒。研究本部 研究統括部 創薬戦略室創薬戦略グループ
山内さん:理学研究科卒。研究本部 基盤技術研究所 分子設計研究グループ
研究開発での仕事内容
(学生)現在はどのようなお仕事をされていますか。
米窪さん:
入社から7年間は薬理研究者として、実験業務に携わりました。大学での動物や細胞を使った実験と同じようなイメージです。現在は創薬戦略グループに所属しており、実験から離れて、大学の先生方や国内外ベンチャー企業と面談をしながら、新しい創薬シーズや外部の技術を社内に取り込むような業務をしています。
また、前述の公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団が実施する「医療ニーズ調査」などの業界活動にも参加したことがあります。
吉田さん:
私は入社してからずっと新薬のタネを探す創薬合成業務に携わっています。私たちが合成した化合物を薬理研究者が評価し、その評価結果をもって「次はこういう化合物を作ろう」「この部分を変換してみよう」という化合物デザインをして、また合成し評価する、というサイクルを繰り返しています。会議の資料作成等、デスクワークをすることもありますが、日常的には主に実験業務を行っています。
山内さん:
私の専門は計算化学で、吉田さんのような合成研究者と連携して仕事をしています。具体的には「デザインされた化合物の効き目の強さなど」をシミュレーションにより予測し、実際に合成する化合物を選択するためのデータを提供しています。
最近は、AI・機械学習等を使った予測にもチャレンジしています。合成された化合物に対して、薬理・薬物動態等の様々な評価がなされ、社内のデータがたくさん蓄積されています。そのデータを活用することで、より効率的な創薬を目指しています。
基本的にコンピューターを使った業務なので、デスクワーク中心になりますが、よく合成の実験室に行って議論をしています。
(学生)山内さんは大学では物理やコンピュータ・サイエンスを勉強されていたとのことですが、薬に関する知識は入社後にどのように身につけていかれたのでしょうか。
山内さん:
最初は創薬のことが何もわからない状態で入社しました。化学や生物に関しては基礎的な知識だけでしたので、仕事中に専門用語が飛び交って、「何を言っているのか分からない」こともよくありました。
そんな時は「これはどういう意味ですか?」など、どんどん吉田さんや周囲の人に聞いていました。質問するだけでなく、本やインターネットも使って勉強をしています。
創薬の研修開発は長期戦。モチベーションを維持する秘訣とは
(学生)企業の研究は限られた時間の中で成果を出すことが求められるのだと思いますが、研究を進める上でどのような事に気を付けているのでしょうか。
米窪さん:
研究のスパンはとても長く、実際に薬が市場に出るまでに10年以上かかります。この長い年月の中で、モチベーションを保つのは実はとても難しいです。
そこで、当社では、比較的短い年月でステージ・ゲートを設けています。ステージ・ゲートとは、例えば「この条件に到達したら、次のステージに行きましょう」というものです。2年ぐらいの中で目標を立てて研究していきます。
個人ベースでは、複数の業務を担当することもあるので、半年ごとに目標を立て、短いスパンで区切るように努力しています。
吉田さん:
プロジェクトを進める上で大切だと感じるのは、「判断力」です。また、妥当な判断をするために、どういう根拠があり、どのような考え方を経て、この判断を導き出したかという「納得感」は、常日頃から意識する必要があると思っています。
そしてその判断をプロジェクトリーダーだけに任せるのではなく、若手の研究者も自分なりの意見を出すということが大切です。当社、特に研究所は若手の意見を大切にする組織文化ですので、若手にもどんどん意見を出してもらえる方がありがたいです。
大学の研究との違い、自分の研究のその先にある患者さんのことを考えながら仕事をする大切さ
シロドシンの分子模型
(学生)研究スタイルについて、企業の研究と大学の研究で大きな違いはどんなところだと思いますか。
米窪さん:
大学時代は、結果が出るのが楽しくて単純に新しい発見があればすごく興奮していました。企業では楽しいだけじゃダメだなっていうところが一番違っていて、やはり企業なので、製品にしなくてはいけません。
製品にならないと患者さんへの貢献ができないですし、そのためには「どういう製品にしたいのか」ということを常に考えながら研究しなくてはいけません。
吉田さん:
大学の研究は、基礎研究が中心かと思います。製薬企業の研究は、「いかに人のためになる薬を創るか」ということを念頭に置き、基礎技術を駆使して製品を創り上げる研究です。「自分たちの仕事を通して、社会にいかに貢献できるか」という点や、企業である限りは「将来的な利益に繋げなければならない」という点、最後に、世の中の人や環境など周りに対して、「自分たちがやっている事の責任を持たなければならない」という点が、学生の時の意識と大きく異なります。
(学生)皆さんがキッセイ薬品さんに入社されたきっかけについて教えてください。
米窪さん:
まず製薬業界を志した理由は、一つの製品が何百万人の方に貢献できるという点が大きかったです。製薬会社の中でキッセイ薬品を選んだ理由は、私は長野県出身ですので、地元の企業だったことも大きいですね。
吉田さん:
私は昔から「薬を作りたい」という思いがあり、創薬研究に力を入れていて、かつ、自社創製品を低分子薬で開発している会社を選びました。企業規模の大きさや場所には特にこだわりませんでした。
山内さん:
大学では物理を専攻しましたが、医療に貢献したいという気持ちは昔から持ち続けていたので、大学院では創薬にも関われそうな研究室を選び、医薬品や医療機器メーカーに絞って就職活動を行っていました。
そんな中、キッセイ薬品の研究所を訪問する機会があり、その時にお会いした研究者の方々が丁寧にいろいろ教えてくださり、質問にも優しく答えてくれて、そういう人柄に惹かれました。また研究所のある安曇野市は自然豊かな場所なので、「ここなら自分が働いていけそう」と思い、入社を決めました。
年齢、性別問わず意見を言える、そんな社風が生み出す、新しいアイデア
(学生)ずばり、キッセイ薬品さんの魅力はどんなところでしょうか。
吉田さん:
当社は低分子自社創製品の研究・開発に今後も特化するという方針を持っています。製薬業界が大きく変革する中で、今後も低分子創薬に注力するということは、信念がないとできないと思います。外部環境に対応しながらひとつの信念を持ち続けることは非常に大変ですが、やりがいを感じます。
米窪さん:
チームワークとコミュニケーションです。創薬では、チームワークがかなり重要です。当社は会社の規模的にそれほど大きい会社ではないので、社員同士、顔と名前が一致します。ですので、非常にコミュニケーションが取りやすいです。
(学生)キッセイ薬品はどのような社風だと感じますか。
米窪さん:
賛否があるとは思いますが、当社はボトムアップでいろいろ提案して活動できるところは社風と感じています。他社の若手研究者の方が「研究テーマって上から言われてやるものだよ」と言っていたのを聞いた時に、当社の特徴なのかなと思いました。
吉田さん:
当社は若い人の意見も大切にする文化が根付いています。若手の意見は、それが正しいか間違っているかに関わらず、その意見によって気づくことが沢山あります。ですので、年齢問わず、いろんな意見を日々出しあっていますし、新しいテーマのアイデアを若い人が提案することも多いです。
女性研究者の産休・育休はハンデとならない。前向きに考え、これからを考えることが大切!
(学生)最後に女性研究者としての働き方についてお聞きしたいです。どうしても育休・産休などがあって、職場を離れると研究の最前線から離れるということで、遅れをとってしまうのかなという印象があるのですが、実際に女性研究者として働かれていて、その点の感じ方などを教えていただきたいです。
米窪さん:
質問された事が今まさに起こっている状態です。約1年間産休・育休を取得し、2021年の4月に復職して1年ぐらいになります。
実際、休んでいる間も心配でしたし、復職してからも心配だった時期がありました。
復職した今思うことは、製薬業界は情報の入れ替わりが激しいので「休んでいる間に何があったか」ということより「これから新しくどう学ぶか」ということを前向きに考えることが大切です。私としては、休んでいても何かマイナスになることはなかったと思います。
当社では、「時短勤務制度」もありますので、自分の状況次第で「早くフルタイムで働きたい」「時短勤務を続けたい」というのは選ぶことができます。
私は復職してまだ1年なので、プライベートでの子育てと仕事のバランスを「今後どうやっていこうかな」と考えているところです。育児休暇前は出張や残業もしていましたが、今はそれができない状態ですので、働き方は状況に合わせて「考えながらやっていきたい」と思っています。
いかがでしたでしょうか。インタビューを通して、研究者の方の創薬にかける思いや、患者さんを助けたいという気持ちをとても強く感じました。
この想いから生まれた医薬品のおかげで、救われている人びとが沢山います。素敵な会社であり、お仕事だなと実感しました。
みなさんもこの記事を読んで、少しでも創薬に興味を持っていただけたら嬉しいです。