
理系職種図鑑 vol.1:研究職 ― 新しい知を切り拓くスペシャリスト
研究職とは?
研究職は、企業や研究機関で新しい技術・製品・理論を生み出す役割を担う職種です。
基礎研究から応用研究まで幅広く、「まだ世の中にないものを生み出す」ことが使命。
理系学生にとって最も憧れを集めるキャリアのひとつです。
研究職の仕事内容
- 文献調査・情報収集:最新の論文や特許をチェックし、研究テーマの方向性を検討
- 実験・解析:仮説を立て、実験やシミュレーションを行いデータを収集
- 考察・まとめ:得られたデータを解析し、次のステップにつなげる
- 成果発表:学会・社内会議・特許出願などで研究成果を発信
1日の流れ例
- 午前:データ整理・ミーティング
- 午後:実験やシミュレーション
- 夕方:解析、ノートまとめ、翌日の計画
活躍できる専攻分野
- 化学・応用化学
- 機械・材料工学
- 電気・電子・情報系
- 生命科学・薬学・農学
- 環境・エネルギー分野
修士・博士課程修了者の採用が多いのも特徴です。
大学と企業の研究の違い
観点 | 大学の研究 | 企業の研究 |
---|---|---|
目的 | 新しい知識や理論の発見 | 新製品や技術の実用化 |
自由度 | 比較的高い、テーマを深掘りしやすい | 事業戦略に沿ったテーマに限定 |
成果の形 | 論文・学会発表 | 特許・製品化・事業貢献 |
時間軸 | 長期(数年以上〜 10年規模) | 中期(数年以内に実用化を目指す) |
やりがい | 知を切り拓く喜び | 社会に役立つ形で成果を届ける喜び |
大学研究=「知識を生み出す場所」
企業研究=「知を社会に届ける場所」
学生さんへのアドバイス
- 研究が好きで学術の道を究めたい →大学・アカデミアの研究者へ
- 研究を社会に役立てたい・製品化したい → 企業研究者へ
どちらも「探究心を武器にする」という点では共通していますが、ゴールと成果の形が大きく違います。
必要なスキル・資質
- 専門分野の知識
- 実験・データ解析スキル(統計解析・ Pythonなど)
- 仮説を立てる力・粘り強さ
- チーム研究に必要なコミュニケーション力
年収の目安
- 新卒(修士修了):年収 350〜 450万円前後
- 30代前半:500~650万円
- 40代以降(リーダー層):700~900万円以上
- 管理職・研究所長:1,000万円超も
特に製薬・化学・電機メーカーなど大手企業では、研究職の待遇が比較的高めです。
一方でベンチャーや中小企業では初期給与は控えめですが、成果次第で大きな裁量ややりがいが得られることもあります。
やりがいと大変さ
やりがい
- 自分の研究が新しい技術や製品につながる喜び
- 学会発表や論文で世界に成果を発信できる達成感
- 知的好奇心を満たしながら仕事ができる
大変さ
- 成果がすぐに出ないことも多い
- 実験の失敗や仮説が崩れることも日常茶飯事
- 長期的な視点と忍耐力が求められる
キャリアパス
研究職のキャリアは一つではなく、さまざまな広がりがあります。
1.研究の道を極める
- 研究員 →主任研究員 →チームリーダー →部長・研究所長
- 専門性を深め、研究所の中核を担う存在へ
2.開発・事業寄りの道へ
- 研究職から製品開発・事業企画へキャリアチェンジ
- 技術とビジネスをつなぐ役割に
3.横展開する道
- 知的財産・特許関連部門
- 技術営業やコンサルティング
- 海外研究所やアカデミアとの共同研究などグローバルな活躍
女性のライフイベントと研究職
研究職は長期的にテーマに取り組む職種であるため、出産や育児による一時的な離職や休職がキャリアに影響するのでは? と不安を感じる学生も多いです。
実際には、多くの企業や研究機関で以下のような制度や取り組みが整いつつあります。
産休・育休制度:
法律で定められた期間に加え、企業独自で延長や短時間勤務を認めるケースも多い時短勤務・在宅勤務:
研究の一部(データ解析・論文作成・文献調査)はリモートでも対応可能研究テーマのチーム制:
一人に依存しない体制を取ることで、休職・時短勤務中でもキャリアが途切れにくい
キャリアへの影響
- 研究の進捗が一時的に止まるリスク:
実験中心のテーマでは、休職中に進められない部分が出る 昇進・評価への影響:
産休・育休によって昇進のタイミングが遅れる場合もある一方で制度活用が前提の評価:
大手メーカーや製薬企業では「ライフイベントを考慮してキャリア形成を支援する文化」が広がっている
工夫のポイント
- チームで分担できる研究テーマを担当
- 上司や人事と復帰後のキャリア計画を相談
- 実験だけでなくデータ解析・論文執筆スキルを磨く
先輩の声
- 「育休から復帰後は時短勤務でデータ解析を中心に担当。無理なく研究を続けられています。」
- 「子育てをしながら研究リーダーを務めています。制度だけでなくチームの協力も大きな支えになっています。」
- 「失敗も多いけれど、チームで議論して次の実験につなげられるのが楽しい!」
(化学メーカー・研究職 3 年目) - 「自分の専攻がそのまま仕事に直結するので、学生時代に学んだことが役立つ実感があります」
(製薬企業・研究職 5 年目)
まとめ
研究職は、
- 未知を切り拓く知的好奇心
- 社会に役立つ技術を生み出すやりがい
の両方を得られる職種です。
年収・キャリアの見通しやライフイベントへの対応を知っておくことで、より現実的に将来像を描けます。
「研究を続けたい」「自分の専門を活かしたい」と考える理系女子にとって、研究職は魅力的な選択肢のひとつです。