【環境省】世界自然遺産やんばるのこれからと共に
世界自然遺産のやんばる国立公園で働くということ
私が働く「やんばる」は、つい口に出したくなるような語感の地名ですが、沖縄県の言葉で「山々が連なり森の広がる地域」を意味します。明確な場所を示す地名ではありませんが、やんばる国立公園は、沖縄島北部の国頭村、大宜味村、東村に広がる亜熱帯照葉樹林や石灰岩の海食崖・カルスト地形、マングローブ林など多様な自然環境の一帯を指定した公園です。このやんばる地域は、2021年7月に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の一部として「生物多様性」の価値が評価され、日本国内では5カ所目の世界自然遺産に登録されました。私はやんばる地域に来て1年半になりますが、やんばるの森を歩くたびに新たな生き物を知ることができ、いつも驚きとともにその生物多様性を実感しています。
やんばる国立公園のレンジャーは、やんばる地域の生物多様性を保全するため、固有性の高い希少種の保全やそれに影響を及ぼす外来種の対策にはじまり、国立公園の保護管理及び利用促進、自然環境に関する普及啓発活動など、日々、様々な業務を行っています。
受け継がれてきたやんばるの自然環境
やんばる地域は他の世界自然遺産地域と比べ、人々の生活のすぐ近くにあるので、ヤンバルクイナやノグチゲラなど地域の代表的な希少種が、民家の庭で営巣したり川辺を親子で歩いていたりと、森林を生息地の核としながらも人の生活圏の近くまで広く生息しています。だからこそロードキルや外来種の侵入といった、人によって引き起こされる問題への対応に苦心しています。また同時に、やんばるの自然環境は、地元行政やNPOなどの関係者やここに暮らす地域の方々により長い間支えられ守られてきたものであり、その守ろうとする強固な意志が様々なかたちで作用し、今のやんばるを形づくっていることを感じています。
やんばるのこれからと共に
世界自然遺産の登録はゴールではなくスタートだとよく言われます。世界自然遺産として評価された素晴らしいやんばるの森が「守りたかったもの」にならないよう、まさに今、やんばるの将来の岐路に立っていると、背筋の伸びる思いで日々の業務に取り組んでいます。やんばるのこれからをどうしていくべきなのか、すぐには結論が出ない問いかもしれませんが、様々な「守りたい」という想いを持った方々と一緒に考え続けていきたいと思います。この重要な時期にレンジャーとしてこの地域に暮らし、関われることは、嬉しく、貴い経験だと感じています。
プロフィール
やんばる自然保護官事務所 自然保護官 (一般職・林学)
<所属>九州地方環境事務所 沖縄奄美自然環境事務所
<経歴>
2019年 環境省採用 生物多様性センター
2021年 現職