エントリーシート(ES)の受かる書き方とは?人事から見た評価されるポイント 理系編
心を込めて作成したエントリーシート。企業の採用担当者にしっかり見てもらえるか、評価してもらえるか不安に感じる人も多いのではないでしょうか。
実は人気企業になれなるほど届くエントリーシートの数も膨大なものとなり、じっくりとエントリーシートを読んでもらえないのが実態です。
今回は日系大手メーカーで理系採用を担当する現役人事がエントリーシートのポイントについて解説します。
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人事が1人でみるエントリーシート(ES)1日1,500件1人にかける時間は5分以下
大手企業には数万通のエントリーシート(ES)が届く
1回の募集で届くエントリーシートの数はどのくらいかご存知でしょうか。もちろん企業の規模・人気によって差はありますが、業界大手の人気企業ともなれば約100人の採用枠に対して3~5万通のエントリーシートが届きます。
単純に倍率だけでも300~500倍に昇り、内定を獲得するのは本の一握りの学生だけだということが理解できるでしょう。しかも、難関を突破するためには、エントリーシートを通過して面接にこぎつけなければいけません。
大企業であっても採用担当者は3~5人程度で分担していることも多く、1人の採用担当者が目を通すエントリーシートの数は膨大なものとなります。例えば、1日8時間の勤務で、5万枚のエントリーシートを1週間で確認しようとしてもかなりの数のエントリーシートを読まなくてはいけません。
もちろん、実際のところは1週間でそんな数を読み切るのは無理ですし、1枚のエントリーシートにかける時間は5分以下を前提に3~5人で分担したとしても、1人が1日あたりに読めるエントリーシートの数はせいぜい300~500程度となります。
届いたエントリーシート(ES)は仕分けされる
そもそも応募者が殺到する人気企業であればあるほど応募者全員のエントリーシートを読むことはできません。それではどうしているのでしょう?
答えは読む価値のあるエントリーシートとそうでないエントリーシートに仕分けをおこなった上で、読むべきエントリーシートのみを読んでいます。
仕分け方法は企業によって様々ありますが、一般的な方法として挙げられるのはSPI等の能力適性検査を用いて足切りのボーダーラインを定める方法です。
企業ごとに定めるボーダーラインを超えている学生のエントリーシートのみを読む対象とし、少し残酷ですがボーダー以下の学生のエントリーシートは読みもせずに終わってしまいます。
そして、読む対象のエントリーシートを選定できればざっと眺めて、各質問項目に対して8割以上の回答ができているかをチェックします。
例えば、400文字以内と指定されている質問に200文字程度しか書かれていないと、余白ができます。そうした余白をチェックし、あまりにもひどいものは「意欲がない」と判断して中身を読む前に読む対象から外していきます。
このようにして企業はエントリーシートを仕分けして本当に読むべきエントリーシートを選定していっているのです。
理系学生のエントリーシート(ES)で人事が見ているポイント
採用担当者は
1. 読みやすいESかどうか(PREP法など)
2. 文章で伝える能力(研究内容や志望動機など)
3. ESの質問に対してしっかりと回答できているか
それぞれを詳しくみてみましょう。
1. 読みやすいESかどうか(PREP法など)
エントリーシートで重要なことは読みやすいことです。繰り返しになりますが、採用担当者は毎日膨大な量のエントリーシートを読んでいます。
わかりづらく読みづらいエントリーシートは、その時点で読む気がなくなってしまうのと同時に論理的思考を問われます。就活をすると「理系だったら〇〇だね」「理系だったら△△が得意だよね」と、理系であることを意識させられることが多いと思います。
特に「理系だから論理的思考が得意だよね」と言われたことは一度はあるのではないでしょうか。理系・文系どちらの学生にも論理的思考は求められるものですが、特に理系の学生に関しては文系の学生よりも論理的思考を期待されています。
そのため、わかりやすく読みやすいエントリーシートにするためには「PREP法」を意識してエントリーシートを書くようにしましょう。
1. Point(結論):初めに結論を述べる(自分の強みは〇〇)
2. Reason(理由):次にその理由を述べる(強みと言えるの根拠の説明)
3. Example(具体例):理由を裏付ける具体例を示す(理由を説明するエピソード)
4. Point(まとめ):最後にもう一度結論を述べる(だから、自分の強みが〇〇と結論付ける)
「PREP法」を意識して文章作成をすることで、論理的で説得力のある内容となるので意識的に書いてみるようにしましょう。
2. 文章で伝える能力(研究内容や志望動機など)
論理的思考ができてもそれを言葉でしっかりと相手に伝えることができるかどうかというのも重要なポイントです。就職をすれば、社内外問わず多くの人と関わりながら仕事をすることになります。
商品開発であれば、社内の営業やマーケティング等の他部署、外部のサプライヤーと関わることもあり、何がしたいのか、何が必要なのかをしっかり伝えていかなければ重大な失敗に繋がることもあるので、「伝わりやすさ」は重要です。
研究内容や志望動機などは1つの文章を短く簡潔に、ということを心掛けましょう。特に専門的な研究内容について説明する場合は、相手はその研究に対して知識も興味もないかもしれない、ということを前提に書くようにしてください。
3. ESの質問に対してしっかりと回答できているか
また、エントリーシートの質問に対してしっかりと回答できているか、という点も重要なポイントです。エントリーシート各質問はその企業が求めている人材の全体像から、その構成要素が抽出できるように考えられた質問となっています。
そのため、エントリーシートの質問に対して明確に回答できていないと「当社に向いている学生ではない」と判断されてしまう可能性が高いです。
また、様々な企業を受けるなかで同じ質問をされることも多いかと思いますが、「またこの質問か」と他のエントリーシートからコピペするのではなく、企業研究をした上でエントリーシートに着手するようにしましょう。
同じ質問でも企業によって知りたい理由や要素が異なる可能性があります。そして、聞かれていること、また聞きたいであろうことを考えて的確に、簡潔に答えられるようにしましょう。
評価されるエントリーシート (ES)
評価されるエントリーシートは、自己PR・志望動機などの質問項目に関わらず、分かりやすく、相手が理解しやすいように書くことが必要です。
分かりやすく書くことを前提に、ここでは質問項目ごとの評価ポイントを解説します。
自己PR
自己PRのポイントは「あなたを構成する要素の抽出」と「行動変化・感情変化のトリガーを知ること」です。自己PRというと、自分がこれまでやってきた成果を中心に記載してしまいがちですが、採用担当者が知りたいのは、経験したことから「何を感じ」「何を学んだのか」「どのような行動変容があったか」だと思ってください。
例えば、理系の学生ではあれば自身の研究活動を通じて自分の「こういう一面を知った」でもいいですし「自分はこのような考え方をもって、このように取り組んだ」という事でもいいのです。
自己PRの最後には自身の「強みを活かして貴社に貢献する」というように前向きに締めるとより印象が良くなることでしょう。
ガクチカ
就活の中でよく耳にする「ガクチカ」つまり、「学生時代に力を入れたこと」についての質問は必ず聞かれると言ってもよい質問でしょう。
理系学生に回答を求めた場合、ほとんどの学生は「研究」「部活」「アルバイト」の経験を回答するため正直言ってそれほど代わり映えはしないのが本音です。
それでもわざわざ「ガクチカ」を聞く理由は、頑張ったことから分かる「行動特性」を判断したいと思っているからです。
ガクチカを回答する際の全体の流れとしては、
- 力を入れたことの概要
- なぜ力を入れたのか
- 取組みの課題点は何だったか
- 課題に対してどのような工夫をしてアプローチをしたか(行動特性)
- 結果(失敗でも成功でも)
- 得たこと・学んだこと
上記の流れを意識するとよいでしょう。
よくある間違いとしては「成果のすごさ」をアピールすることですが、企業側が聞きたいのはすごさよりも、結果を導き出した過程です。
これは研究活動も似たところがあるの理系学生にとっては理解しやすい点ではないでしょうか。
研究内容
理系の学生が就活で一番悩むのが研究内容の説明と、それをどのように志望動機に繋げるかです。研究内容がそのものズバリ活かせる企業を探そうとするとかなり限られますし、学生の研究と企業の研究や開発はレベルが違います。
そもそも企業側も自社が取組んでいる領域の即戦力を求めているわけではなく、自社にマッチし成長が見込める人を探していると思ってください。
だからこそ、採用担当が知りたいのは単純な研究の内容や成果ではない、ということを意識しておきましょう。
研究内容を伝える際に重要なことは、研究から何を学んで今後どう活かそうと思っているのか、そして論理的思考と伝える力がどの程度あるのか、ということです。
そこで研究内容を説明するときに重要なポイントを紹介しておきます。
➀研究内容を一言でいうと?:
専門用語が多くなりがちな研究について端的に述べることで能力の高さを印象付けることができる。
②研究テーマを選んだ理由:
自分が惹かれたポイントを意識して記載することで、思考特性を伝えることができる。
③研究の進め方、課題の解決方法:
諦めない粘り強さ、継続する力、多面的にトライ&エラーを繰り返せる柔軟性を伝えることができる。
④研究の成果と学び:
成果よりもそこから何を学んだかが重要。1つの出来事からどれだけの学びを得ることができるのか、多面性、視野の広さ、柔軟性を伝えることができる。
⑤仕事でどう活かせるのか:
研究内容と結びつけるでも良し、結びつかないのであれば学んだことや、自分の思考特性と絡めるでも良し。例え無理やり感があったとしても、全体的にうまく、矛盾なくまとまっているのであれば、それは能力として評価されるので安心して大丈夫です。
志望動機
学生生活で培った専門性を活かしたいという人もいれば、文系理系職種にとらわれず就活したい、専門外の理系職種に就きたい、と就職に対する考え方は学生よって様々でしょう。
このように「どこで働きたいか」「何をしたいか」をアピールするためには志望動機のブラッシュアップが必要不可欠です。志望動機の良し悪しは、何千、何万枚と届くエントリーシートの中から選ばれるためのポイントと言っても過言ではありません。
志望動機を書くポイントは、「何をその会社で実現したいのか」「なぜその会社でなければならないのか?」ということです。
学生時代の研究が直接活かせる企業や職種は少ない一方で、理系学生は「どうして研究と関係のない業種・職種なのか?」「研究したことを活かさなくてもいいのか?」という観点の質問に対してを上手く伝えることができるかで他の学生と差別化することができる点を理解しておくとよいでしょう。
エントリーシート記入例
最後に以下の業種・職種についてエントリーシートの志望動機の記入例について見てみましょう。ポイントも解説していますのでぜひ参考にしてみてください。
製薬会社研究職
御社の研究職を志望する理由は、〇〇分野の新薬の開発に携わることで、人類の未来を変えたいと考えています。
大学、大学院と△△に関する研究を行ってきて、なかなか思ったような結果が出ない中でも、☆☆(具体的な工夫)を実施することによって難局を打破してきました。
私の強みは「今をもっと良くするために考え、諦めずに試行錯誤し続けること」です。△△分野における最先端である御社の研究職で☆☆を実現したいと考えて志望しました。
~ポイント~
ご存知の通り、薬の開発には長いものは何十年もかかるものもありますし、新しいウイルスは次々と生まれ続けます。
人のQOLや生命を左右する薬を作る、という仕事に携わる人に求められるのは真摯な姿勢と根気強さ、論理的な思考と探求心です。
すぐに結果が出ないことに対しても考え続けられること、結果が出るまで諦めないという自分自身の強みを絡めて伝えましょう。
システム会社SE職
<医療関連システム会社の場合>
私が実現したいことは「ITの力で世界を繋ぐ」ことです。
様々な病気や感染症に対し、先進国・途上国関係なく生命の価値を同じにしたい、その為に大切な事は現状把握と情報共有だと考えています。
治験の状況、患者さんの数、論文情報、ワクチンの有無や在庫、全てを網羅するようなシステムに関わることで、人々の未来を支えたいと考えて志望しました。
私自身アイデアマンと言われることが多く、研究やサークル活動(部活でも何でもよい)の中で様々なアイデアで現状を打破してきたという自負があります。
例えば、(以下具体例)
このような経験や強みの〇〇を活かして貴社のSE職としてシステム構築に貢献していきたいと思います。
~ポイント~
システム会社のSEはどう課題を解決していくのか、よりよくしていくための方法を従来の枠にとらわれることなく考えることができるかということが大切です。
課題や理想に対してその解決方法、道程をいくつ描けるか、そして柔軟な思考で取り組めるか、ということが判断材料となります。
困難な課題に対しても根気強く取り組み、そしてその状況を楽しめる人物であるということを伝えていくとよいでしょう。
メーカ 技術職
<消費財メーカーの場合>
私は「こんな商品があったらいいけど、技術的に無理」という事をなくしていきたいという思いがあります。
消費者に対し、世界初の商品、唯一の商品を届けるため、今までにない技術、生産方法を生み出すことで貢献したいと考えて志望しました。
そうすることで、世界中の人へ今までになかった商品を提供し生活を豊かにしていきたいと考えています。
~ポイント~
技術職は他の理系職種に比べても、学生が持っている経験や技術について、またどんな事をしたいのかということを具体的に聞かれます。
この志望動機の場合「なぜ世界中の人の生活を豊かにしたいと思ったのか?」等きっかけを聞かれる可能性がありますので、準備しておきましょう。