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「えっ!」日本精工(NSK)が美顔ローラーを開発??そこに込められた開発者の思いとは

RIKEJO CAFEのインタビュー記事や、イベントでもおなじみのベアリングのメーカーである日本精工(NSK)。私達はNSKが美顔ローラーを開発したという話を耳にしたので、その開発の経緯や実態についてお話を伺ってきました。

目次[非表示]

    1. 0.1.お話を伺った社員の方
    2. 0.2.私達がインタビューを行いました
  1. 1.そもそもなぜ美顔ローラーを開発したのか
  2. 2.プロジェクトに込められた思い
  3. 3.エンジニア時代
  4. 4.取材を終えて・・・


お話を伺った社員の方

倉本さん

大学では機械工学を専攻、NSKに入社し、エンジニアとしてベアリングの設計に携わる。その後広報部に異動となり、現在はエンジニア時代の技術や知識を活かしながら企業広報として活躍している。

私達がインタビューを行いました

機械工学を学ぶ修士1年生2名と学部3年1名の合計3名の理系女子で訪問してきました。


そもそもなぜ美顔ローラーを開発したのか

ーー(学生)倉本さんは、普段はどのような仕事をされているのですか?


私の普段の仕事は、企業広告の企画立案です。NSKはお客様が企業である、いわゆるB to Bですので、一般の方にはなかなかNSKがどんな会社でどういう技術をもっているのかあまり知られていません。そこで、一般の皆さんにNSKがどんな会社なのかを広める仕事をしています。


企業広告と言っても、CMや雑誌の広告だけを指すのではありません。例えば、社外向けのカタログを作ったり、ちょうど2016年にNSKは100周年を迎えたので、社外向けの記念展覧会を企画開催したりしました。記念展覧会では、アーティストの方々と一緒にコラボをして展示品をつくりました。その時には、NSKの技術をどう表現していくかというところで、エンジニア時代の知識を活かしています。


ーー(学生)早速ですが、ベアリングのメーカーであるNSKが美顔ローラーを開発したと聞いて驚きました。その経緯について教えていただけますか?

NSKでは創立100周年を記念して、2016年より「あたらしい動きをつくる。」ビジョンを具体化するプロジェクト「あたらしい動きをカタチにする道場プロジェクト」を実施しています。


このプロジェクトは領域・分野問わず社内からアイデアを募集し、選ばれたアイデアに対して会社が支援してカタチにします。


そこで私は、このプロジェクトに美顔ローラーのアイデアを応募しました。様々なアイデアの中でこの美顔ローラーのアイデアが選ばれ、開発に取り組むことになりました。


ーー(学生)なぜ美顔ローラーを開発したいと思われたのですか。

プロトアイデア図


私は、広報という仕事をしていることもあり、社内、社外問わず、もっと多くの女性の方にNSKのことを知って欲しいと思っていました。そこで、女性らしいアイテムとして美顔ローラーの開発を考えました。


ーー(学生)アイデアがカタチになるまでにはどのようなステップがあったのでしょうか。開発期間など具体的に教えていただけますか。


開発期間は半年という短い期間でした。まずは、社内で座談会を開いたり、アンケートを実施したりして、社員からの意見を求めたり、実際に企画に参加してくれる社員を募りました。


そして、普段の仕事では全く関係ないような美容関係の展示会に行き、業界の動向や、技術について調査しました。このようにして、NSKらしい要素を取り入れながら、前半3か月で開発の方向性を決めました。


後半の3か月間では試作品の作成にとりかかりました。試作品が出来上がると、最後に社長はじめ役員にプレゼンを行ったところで、美顔ローラー開発のプロジェクトは一旦終わりになりました。


ーー(学生)NSKらしさを製品にどのように取り入れましたか。

まずはやはりNSKのベアリングを使うということ。滑らかな回転や動きが実現できます。
そして、市販されている美顔ローラーは肌触りのよいツルツルした製品が多かったので、今回はあえてザラザラにして、マッサージ効果を高めたいと考えました。そこにはNSKを代表する技術「トライボロジー」を使っています。


また、女性だけでなく男性も使えるように、ローラーを使う人によって交換可能にするアイデアや、暖かさが持続するような素材でリラックス効果を高める。美容液などが染み出してくると便利。などといった社員からのアイデアも取り入れることになりました。
それらを取り入れて作った試作品がこちらになります。



ーー(学生)大きいですね!

実際の開発期間は3か月でしたので、サイズを小さくするまでにはいたりませんでしたが、ここには、社員からの様々なアイデアが詰まっています。


プロジェクトに込められた思い


ーー(学生)プロジェクト自体は何人くらい、どんな方たちが参加されたのでしょうか。

私が、このプロジェクトに応募した理由の一つに、先ほども触れましたが、社内の管理部門(経理や総務など)で働く女性にも「もっとものづくりを身近に感じてほしい。」という思いがありました。


そこで、一番最初の企画時は部署問わず社内に声をかけました。すると5名の管理部門の女性社員が手を挙げてくれました。
技術部門のエンジニアにも協力いただきました。市販品の調査では、専門的な測定器を使ってベアリングの有無や材料・材質を確認したり、ボール部分の接触面積の調査をおこないました。また、エンジニアと打ち合わせをしていると、いろいろ新しいアイデアも生まれてきました。


例えば、新素材の開発をしている部門からは、ボールの部分に暖かくなる素材を入れると気持ちいいのではないか。潤滑油の技術を研究している部門からは、ちょっとずつ油が染み出してくる素材の技術を応用して、美容液とかが出てきてもいいのではないか。などです。様々な面白いアイデアがでてきました。


このようにして、はじめは、私1人から始めたプロジェクトでしたが、多くの社員の協力をいただきながら、無事に試作品を作り上げることができました。
プロジェクトの最後には、社長はじめ役員に試作品のプレゼンをおこないましたが、その際に役員の方には、「まさか、うちの研究所や開発部をこのために動かすとは!」と皆さん爆笑されていました。


ーー(学生)この、カタチプロジェクトに応募する前と後で、どのような心境の変化はありましたか。

仕事に対するモチベーションがあがりました。


このプロジェクト自体、仕事として時間を割いてよいという許可を頂いていたのですが、ここまで、会社からバックアップしていただけると思っていませんでした。「こういうことをやらせてくれる会社に勤めていて幸せだな」と思います。


また、分からないことがあったときには、役員はじめ、他の社員に相談してみると「こういう人がいるよ」と紹介してくれたり、助けてもらったりすることがありました。本当にありがたかったです。


もし今後、私が逆の立場で、何か困っていたり、新しいことをやりたいという人が私を訪ねてきてくれた時には、「快く対応しよう。」と思うようにもなりました。
仕事に対してもこのプロジェクト参加してからは、何か自分が「やりたい。」と思ったことがあれば、声に出して言ってみるということが、自然にできるようになったと思います。


エンジニア時代


ーー(学生)女性エンジニアだった時のことをお聞きします。女性ということで、特別感とか優越感だったり、逆に、寂しさ、劣等感などそういうものを学生の時や仕事で感じた経験はありますか。

私自身は、性格の面もあると思うのですが、どちらかというと大学時代は男性とも同性の友達付合いに近い状況になることが多く、男性のほうもあまり気を使ってもらわなくて済むような関係が比較的築けていました。


会社に入ってからも同僚とか後輩とかも含めて、そこまで線を引かれるとか、そういうのはありませんでした。ですので、寂しいとか、優越感とか劣等感とか、そういうのはあんまり正直、感じたことはありませんね。


ーー(学生)私は今、大学生なのですが、授業で学んでいることが、きちんと身についていて、社会人になったときに通用するのかが不安です。どういった知識を就職するまでに身につけておくとよいでしょうか。

私は機械システムを専攻していたので、学生時代は機械から電気まで、広く学んでいました。その分、自分の知識が浅いのではと思うこともありました。けれども、社会人になって思うことは、学生時代にどれだけ学んでいても、会社ではもっと深く学ぶ必要があるということです。

もちろん、学んできた専門知識が役立つチャンスもたくさんありますが、技術は日々進化していくので、新しいことに出会った時に学び続ける姿勢が大切だと思います。


大学では広く浅く学んでいて専門性がないから不安だと感じる気持ちはとてもよくわかりますが、仕事で何か知っている専門用語を耳にした時に、「それ、あの授業でちょっと聞いたな。」とわかれば、調べるときの取っ掛かりにもなるので、その時は深く知らないことでも、だいぶハードルが下がります。


大学の専門知識っていうのは、そういうハードルを下げる意味を持っていたり、やはり理論の根本的なところを学べるチャンスなので、そういうところは学んでおいた方がよいと個人的には思います。


ーー(学生)もともと、エンジニアで今は広報の仕事をされているとのことですが、NSKは部署異動や転勤などは頻繁にあるものなのでしょうか。

NSKでは、部署異動は重要な経験の一つとして肯定的に考えています。
会社のいろいろな部門に就いてもらうことで、経験を積み、キャリアを構築してもらいたいという意図から、部署異動を国内外問わず行っており、転勤を伴うものも当然あります。


転勤については、勤務地が変わっても転居を伴わないものと、転居を伴うものがあります。NSKの場合、勤務地が関東、近畿など、地域ごとに比較的かたまっているので、転勤になっても転居を伴わないこともあります。例えば、私もエンジニア時代は神奈川の藤沢にある技術センターに通勤していて、本社(東京の大崎)に転勤になりましたが、引っ越しはしていません。周りにも、そういった人は結構います。

少し質問からずれるのですが、私は、部署異動はある意味チャンスだと思っています。例えばエンジニア時代、私はベアリングの設計を担当していたのですが、ベアリングの種類ってとても多いのです。現場からは「呼び番号(ベアリングの型式番号)の種類が多いと工場の管理上大変です。」という話をきいたことがあったのですが、当時はその大変さをあまりわかっていませんでした。


しかし、工場実習をした際、完成した製品を箱詰めして出荷するところを担当し、その時になって初めて「や、種類が多いというのは、これはちょっと大変だな。現場の言っていた“大変”って、こういうことなんだな。」と実感しました。


部署が違うと他の誰かが言っていることが、同じ社内でも実感できず、自分とは遠いものと感じていたのです。社内の悩みを自分の立場で考えたときに、「何か助けられることはないのか。」「できることはないのか。」と会社全体で考えることが大切です。異動で様々な経験をすることで、相手の立場、それぞれの職場の文化を知ることができ、視野が広がり、結果的に自分自身にも会社全体にもプラスになると思います。



取材を終えて・・・

私達は、100周年以上続いている老舗メーカーであるNSKがこんなにも社内プロジェクトを活発に実施されていて、新しい動きや新しいアイデアを、領域、年代問わず取り入れていこうとしている会社だなんて正直、思っていませんでした。


取材を通して、社会の変化を捉えるだけでなく自ら作り出そうとしているNSKを知ることができ、とても魅力的に感じました。お話をうかがっているだけでもワクワクしました。NSKのこれから先の取り組みもとても楽しみです。


取材にご協力いただきありがとうございました。


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