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これで解る!ものづくりの開発プロセス イリソ電子工業株式会社

みなさん、一つの製品ができあがるまでの「ものづくりの開発フロー」について知っていますか?

そこにはどんな仕事があるのでしょうか。

理系学生の私達が最初にまず思い浮かぶのは、開発、設計、製造の分野だと思います。しかし実際には、マーケティング、営業、資材調達や品質保証など様々な部門がそこには関わっているのです。

では、お客様からのご要望から実際に製品がお客様の手元に届くまで、社内外ではどのような議論や検討がされているのでしょうか。

今回、電子部品の一つである「コネクタ」の「開発設計・製造・販売」を一貫して行うイリソ電子工業株式会社(http://www.iriso.co.jp/)さんにご協力いただき、ものづくりの流れについて詳しく現場のお話を伺ってきました。

その内容をレポートします!!


今回のインタビューには私達が参加しました。

玉川(千葉工業大学大学院 機械サイエンス専攻 修士1年)
平田(名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 2年)
横井(名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 2年)
竹内(京都大学 工学部 工業化学科 2年)
大友  (東北大学 工学部 電気情報物理工学科 1年)

全国から集まりました!

イリソ電子工業さんからは、営業・設計・信頼性実験室の社員の方にご参加いただきました。

営業部 楠さん。

技術部 設計を担当する土井さん。

信頼性実験室 小部さん


はじめて「コネクタ」を触ってみた。

これは、イリソさんの実際の製品です。「コネクタ」単体で機能するものはありません。「コネクタ」は基板と基板を結んで電気を通す役割を担っている機構部品です。

基本的には、プラスチック樹脂部と金属端子で構成されている小型の部品です。

しかし、この小さい部品の中にも、色々な設計者の想いや技術、こだわりが詰まっています。
この製品ができるまでの開発プロセスについて、各部門の社員の方に教えていただきましょう。


実際に製品ができあがるまでのプロセスについて社員さんから学ぶ

1.お客様のニーズをヒアリングし製品の提案を行う 営業


(営業)

まず、イリソの商品である「コネクタ」はこの製品1つで何か機能を持っているものではないため、必ず、お客様の製品の中の一つの部品として使われています。

ですので、私達のお客様は、自動車部品メーカー、家電メーカーなどの製造業の会社になります。

お客様が新しい製品を開発する場合、車載関連であれば、5年くらい前から、その他の製品であれば2年くらい前から新しい製品の設計・開発がスタートします。

イリソでは、その段階でお客様から大まかな要望をいただくこととなります。
ご要望の内容によって大きく分けて2つのパターンがあります。

一つは、お客様から要望をいただくパターンです。例えば、「もっと薄くしたい。」「高速の信号を流したい。」などという要望です。

もう一つは、「規格品」と言って、ピンのサイズはこれ、製品のサイズはこれという様な形で形状が全て決まっているものです。

営業は、お客様と直接お話をして、「現在困っていることは何か。」「どうしたいのか。」というニーズをヒアリングします。そして、ヒアリングで得た情報を元に、営業は「企画書」を作成して、技術部に伝え図面化します。

その後営業は、技術部が図面化した製品をもっとよりよい製品にするために、お客様と協議をします。その際に最近では、3Dプリンタを使って製品を作り、お客様に感触をみていただいたりしています。このようにして、デザインを固めていきます。


2.お客様のご要望を実際に形にする 設計

(設計)

まず、営業から「企画書」が流れてきます。設計では「企画書」に記載されているお客様からのご要望や機能を満たす「コネクタ」の形を3D CADを使ってパソコン上で作ります。

次に、試算を行ないます。試算とは、製造までにかかるコストを計算して、利益が出るかどうかを計算することです。

利益が出ない場合は、各部門(営業、技術、資材部、生産技術、設備など )を集めてどうすれば利益が出るか実現性を検討します。
利益が出るということで、開発にGOが出ると、その試算結果を営業に返して、営業がお客様と契約確認を行ないます。

契約確認が取れた後に詳細設計に入ります。詳細設計は大体長くて1ヶ月ぐらいかけて行ないます。イリソでは、1つの製品を一人の社員が責任をもって設計を担当します。

詳細設計が出来上がると、各部門を集めて、さらによりよい製品にするためのDR(デザインレビュー)を行ないます。

そして、決定した設計に基づき、「金型」をつくります。「金型」とは、すごく分かりやすく言うと、「たいやき器」みたいなものです。「コネクタ」では金型に樹脂を流して形をつくりますが、1つの「金型」で一気に「コネクタ」全体が出来上がるわけではなくて、金属部分や樹脂部分など細かいパーツに分けて作成します。そして、作成したそれぞれのパーツを組み立てて一つの製品にします。

このようにして、組み立てた製品を実際にお客様のご要望に満たしているか確認するために、まず技術部でチェックをします。その後さらに、信頼性実験室の方でも細かく評価をし、製品機能を確認します。


3.量産にむけた生産技術・生産管理・資材調達


出典:イリソ電子工業HP 「茨城工場」

技術部の設計の仕事は基本的にパソコン上で形にするところまでですが、それを実際にモノにする、見えるものにするとなった時には、工場で生産をしなくてはいけません。そこで、「生産設備」といったものが必要になってきます。

それが、先程のお話にもあった「金型」とよばれるものです。この「金型」の設計やメンテナンスを行っているのが生産技術の部署になります。

工場で生産をするための設備が並んでいる様子を「ライン」と呼んでいるのですが、この部署では、そのラインの立ち上げも行っています。

また、生産に必要な材料の調達は資材部が行います。


4.製品がお客様の要求を満たしているか様々な製品評価を実施する 品質保証・信頼性実験室

(信頼性実験室)

実際に製品ができると技術部門でも製品評価を実施しますが、細かい仕様に関する評価は信頼性実験室が担当します。

例えば、車載向けの「コネクタ」ですと、車に実装した場合を想定するので、低温ではマイナス40度(北極やロシアなどを想定)、高温では60度、80度を想定します。さらにエンジン周りに使用する場合ですと、120度という高温を想定し、評価を行います。

このように、実際の試験は、実際に私達が生活しているような環境ではなくて、より高負荷をかけた場合を想定して行っています。

信頼性実験室では、それらの環境下で「コネクタ」を使用した場合に「コネクタ」の機能である基板に実装する、挿抜できる、つながる、電気を流すということができることを評価し、報告書にまとめて技術部に結果を返します。

当然NG(仕様に合わない)結果が出た場合は、技術が直ちに改善を行ない、再度評価するということを繰り返します。このようにして、最終的に全ての試験で合格すると、報告書が技術部から営業に渡り、営業がお客様に報告書を提出して製品が完成したとなります。

また信頼性実験室では、「コネクタ」の金属部分には金めっきや錫のめっきがされているのですが、そのめっき加工がきちんとされているかも評価しています。


(学生)社員の皆様、ありがとうございます。様々な部署が力を合わせて一つの製品を作り上げているのですね。お話を聞いて、開発のプロセスがイメージできました。


学生からの質問!もっと詳しく聞いてみた

営業

ーー(学生)イリソさんではどのような体制で事業を取り組まれていますか。

(営業)

イリソでは、「マーケットイン」の発想から、お客様のニーズに密着した製品づくりを行っています。お客様からのご要望を大切にして、アプリケーションの基本コンセプトから製造ラインに至るすべての過程に存在する課題を検証して製品設計に落とし込んでいます。




出典:イリソ電子工業HP「マーケットインの発想を具現化させる「チームイリソ」という体制づくり」


ーー(学生)営業さんはどれくらいの数のお客様を担当されていますか。

(営業)

そうですね、私が担当している定期的にお取引があるお客様ですと6社ぐらいですね、そこにプラスして未取引のお客様や、日本で開発を行っているが製造は海外でというお客様の海外工場や拠点のフォローがあります。


ーー(学生)お客様から新製品の開発依頼が来た時は競合とのコンペになるのでしょうか。

(営業)

新製品で開発をするときには大体競合がつきます。日本のトップメーカー全てとぶつかることとなります。

営業としては、まず、イリソの製品がお客様にとって使いやすいのか、使いにくいのかをヒアリングします。使いやすい場合は、競合に対してはどのポジションなのか、価格が高いのか、競合とくらべると使いにくいのか、技術面でどうなのかなど、詳しい情報を営業が聞き出してきます。

もし、価格が高いのであれば、生産部門に材料変更ができないか、技術の面であれば、設計部門にこういった要素を入れることはできないかなど検討してもらいます。そうすることで競合より優れた製品を作ることをしています。

この時に大切なことが、各部門と密にコミュニケーションをとることです。「イリソオールスターズ」と呼んでいるのですが、部署の垣根を超えて社員一丸となってお客様にアプローチすることを心がけています。


ーー(学生)営業の仕事をする上で大切にされていることは何ですか。

(営業)

仕事でも私生活でも、生きていくために大切だと思うことは、「コミュニケーション」ですね。

営業はお客様からの要望を「企画書」と言う形で技術に依頼を出すのですが、依頼すれば大丈夫だろうと思っていると、全く違う方向で進んでいたりする場合もあります。その場合は、きちんと技術に説明して、意思疎通を行う必要があります。

みなさんが今後どこの会社に行っても、どんな仕事をしても、コミュニケーショをとる大切さは変わらないと思いますし、そこが、AIに変わることができない人間の素晴らしいところだと思います。


設計

ーー(学生)何を使って設計をしていますか。

(設計)

 SOLIDWORKS(ソリッドワークス)という3次元CADの設計ソフトウェアを使ってパソコン上で設計しています。


ーー(学生)設計の楽しさってどんなところですか。

(設計)

設計の面白みは自分で画を描いたものが、実際に形になった時ですね。とても達成感がありますね。


ーー(学生)設計では、やはり機械や電気電子などを学生時代に専攻されていた方が多いのですか。

(設計)

そうですね、比較的人数は多いですが、ただ、関係はないと思います。

CADも大学ではあまり使ったことのない人もいますし、最初のスタートはみんな同じです。入社後にどうやって毎日勉強するか、という熱意、やる気が大切です。


ーー(学生)設計のお仕事をされている中で大切にされていることは何ですか。

(設計)

スピードですね。短納期のものもありますので、もし分からないことがあった場合は、一人で抱え込まずにすぐに上司や先輩に声をかけて仕事をなるべく早く進めるように心がけています。


ーー(学生)これから、自動車や工場のIoT化など、電動で動くものが増えるとおもいますが、イリソさんではどのような先行開発が行われているのでしょうか。

(設計(信頼性実験室)

車載向けには、今後のEV化や自動化に向けて色々なアプリケーションの需要が見込まれます。そこを重点的に販売強化する取り組みをしています。

また、IoTと言うと、みなさんは、家電製品がインターネットとつながるというイメージが大きいかもしれませんが、イリソでは、工場のIoT化に着目しています。お客様先での製品の組立をロボット化することに貢献できるような製品の開発を行っています。


(営業)

例えばこの製品はカード挿入と同時にロックがかかるようになっています。これによりカードを挿入すると自動にロックされるので確実な嵌合が実現しロボットによる組立も可能になります。この製品は、当社の特許を取得しています。


出典:イリソ電子工業HP 「Auto I - LOCK TM」


ーー(学生)技術者、研究者になりたい学生に対して、アドバイスをお願いします。

(設計)

技術者も営業と一緒にお客様のところに足を運んで、「どういったものが今求められているのか。」という情報を常につかむことが、技術者として大切だと思います。世の中の流れをつかむことを意識していただければ良いかと思います。

品質保証 信頼性実験室

ーー(学生)難しい製品評価はありますか。

(信頼性実験室)

イリソ独自のフローティングテクノロジー「Z-Move™(ジィームーブ)」を採用した製品があります。

出典:イリソ電子工業HP「Z-Move™(ジィームーブ」

どのような技術かというと、嵌合時の接続面が可動する(フローティング)することによって、「コネクタ」をつかって基板と基板をお客様のところで組み立てる時のちょっとしたズレを吸収することができる技術です。

今まででは、X軸、Y軸に可動する製品はありましたが、接点が固定されたままZ軸が可動する技術はイリソが世界で初めて開発しました。

(設計)

車はエンジンがかかれば必ず振動します。昔の「コネクタ」は振動によって基盤共振が生じ、電気を通す部分が剥離してしまい、接触不良のため動作しなくなってしまうことがありました。その改善策として、イリソが「Z-Move™(ジィームーブ)」を開発しました。この技術はイリソが持っている特許になります。


(信頼実験室)

製品評価においても、今まではZ軸方向に可動する製品がなかったため、その製品の評価方法も自分たちで検討しながら評価を行う必要がありました。

いろいろ試行錯誤する中で、失敗したこともありますし、苦労しました。新しい技術というと、設計や開発の大変さはみなさん想像できると思いますが、評価の部分、お客様にどのような保証ができるかといったところも大切です。


ーー(学生)信頼性実験室のお仕事をされている中で大切にされていることは何ですか。

信頼性実験室)

人と人のつながりを大切にしています。信頼性実験室は「依頼書」というかたちで各部署から依頼を頂いて製品評価をすることが多いのですが、依頼者の意図やどういった経緯で依頼されているのかということを、話し合ったりしながら摺り合わせを行い、もっとできることはないかを検討したりしながら、よりよい結果が出せるようにしています。





イリソ電子工業株式会社様ありがとうございました。

いかがでしたか?みなさんものづくりの開発プロセスについてイメージわきましたでしょうか。

今回のイベントでは、オフィス見学や施設見学もあり、より一層働くイメージがつきました。

イリソ電子工業さんは、技術部や信頼性実験室が本社である新横浜にあるため、営業や各部署とも物理的に近く、密にコミュニケーションが取れるところが素敵だなと思いました。


今後ますます、需要が高まる分野ですので、とても期待できる会社です。

今回ご紹介したイリソ電子工業株式会社さんでは、新卒採用をおこなっています。

気になった方はぜひ下記リンクより新卒採用ページをチェックしてみてくださいね。

会社概要

会社名 イリソ電子工業株式会社
(IRISO ELECTRONICS CO.LTD)
本社所在地 横浜市港北区新横浜2丁目13番地8号
創業 1966年12月
店頭登録 1994年9月(市場銘柄:東京証券取引市場 第一部 6908)
事業内容 各種コネクタの設計・製造及び販売
資本金 56億4005万円
売上高 375億円('17 年3月)
従業員数 3,489名(平成29年3月末)
生産・開発拠点 工場:日本、中国、フィリピン、ベトナム
開発拠点:インテクノロジーパーク(新横浜)、生産技術開発センター(川崎)、上海R&Dセンター
営業拠点 日本、韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、ドイツ、USA、インド


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