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夢中になって仕事をする中で辿り着いた、今のポジション。日本精工の執行役にインタビュー

予算やリソース・経営のテーマを決定する経営企画。グローバルでは3万人規模の日本精工にて、そんな経営企画の仕事をこなしているのが執行役のポジションに就いている、吉田ルリ子さんです。経理や人事など、さまざまなキャリアを経て今に至る吉田さん。これまでのことや、仕事に対する考え方を聞きました。


目の前の仕事をこなし、来たチャンスを逃さなかった。

海外駐在時の吉田さん(右)、当時の上司(左)と


学生:執行役に就かれるまでの、キャリアを教えてください。

吉田さん:アメリカの大学の英文科を卒業した後に帰国し、日本精工に就職。最初に配属されたのは、工場の総務部門でした。それから研修派遣というポジションで2年間をイギリスで過ごしました。帰国してからは、経理、人事を経験し、少しずつ仕事の幅を広げていくことで自然と今のポジションに到達しました。


学生:日本精工に就職した理由を教えてください。

吉田さん:アメリカの大学を卒業して帰国したときは、日本で大学に入り直して英語の先生になろうかなと思っていましたね。ですが大きな組織に所属して、大きなことを経験したいと思うようになったんです。私が卒業したアメリカの大学は、学生数が3000人か4000人くらいしかいませんでしたから、私は小さな組織しか知りませんでした。それで就職活動をしていた際に、日本国内で今、従業員が1万1000人くらい、 グローバルでは3万人規模の日本精工に出会い、就職をしました。入れて良かったです。


学生:海外赴任に行こうと決めた時は、どのようなビジョンをお持ちでしたか?

吉田さん:当時、イギリスのベアリングメーカーを買収しました。その中で庶務的な仕事がたくさん発生し、研修派遣というポジションができたんです。

会社から「吉田さん、英語が得意だよね、行ってみる?」と言われて、それで「行きます」と手を挙げて行くことになりました。海外赴任に行く際は結婚願望もありましたし、悩みはしましたが、特にビジョンがあったというのではなく、結果目の前にチャンスが来たからそれをつかむ選択をしました。

現在の執行役のポジションに関しても、本当に想像していませんでした。目の前の仕事をひたすらこなして、こなして、こなしていって、夢中だっただけ。ですので、入社当時からのキャリアイメージとは今は全く違ったところに到達している、そんな感覚です。


学生:同じ会社にずっといらっしゃる理由があれば教えてください。

吉田さん:私は30歳で結婚し、子供がひとりいます。

仕事を辞めることなくきた理由は、辞める理由がなかったということと、今以上に楽しい仕事がその時々の場面で出てこなかったということです。会社の中でやってきて色々なチャンスをグッとつかんでという繰り返しだったんですよね。最初から三十何年働くぞと決めていたわけではないんです。結果的にずっと働いています。


学生:キャリアの選択をする時や、社内で大きな決断を迫られるときに、拠り所となる価値観や判断基準はありますか?

吉田さん:今の判断基準は、迷ったときには短期的な目標を達成することなのか、あるいは中長期的なのか、より未来志向の選択肢を選ぶことにしています。

ですが例えば海外赴任に行くかどうかの決断をした当時は迷いましたし、友だちにものすごく相談をしました。そのときは前にも言った通りチャンスをつかんだだけですので、基準はなかったから、なくても大丈夫かもしれないですね。でも今だったら、より長期的な目標を達成できる方を選びます。


仕事の課題や人間関係。誰もが経験する悩みを、どう乗り越えた?


気分転換に時々ネイルアートも


学生:今までの仕事で一番たいへんだったことと、それをどう乗り越えたのかを教えてください。

吉田さん:一番印象に残っているものは私が経理部門にいた時のことです。決算発表の日程というものは、あらかじめ決まっているんです。ところが決算発表日の直前に、体調不良となってしまった方がいらして、誰かがその代わりをしなくてはならなくなりました。そこで任されたのが私だったんです。本当に辛かったけれど、できませんという状況ではありませんでした。周りの人も助けてくれましたし、自分が任されたことはしっかりとこなさなくてはならないという気持ちでいっぱいでした。

エクセルのスプレッドシートを眉間にしわを寄せながら眺め、どうにか周囲の励ましもあって決算発表ができました。みなさん、日本精工が決算発表をできなかったというニュースは聞いたことがないですよね。裏にはそんな地道な涙ぐましい努力が山のようにあります。


一つひとつ乗り越えて、乗り越えられない山はないんだなという感覚でいます。その時々はこれが一番大きい山だと思っているんですが、それを超えると、次はもう少し大きい山を越えられるようになります。みなさんも大きい山をどんどん越えられるようになるので、あまり心配しないでくださいね。


学生:現在研究室で後輩を指導する難しさを日々感じています。部下の方を相手にする時も同じ困難があると思うのですが、吉田さんがどうなさっているのかを教えてください。

吉田さん:学生でも社会人でもどんな組織でも共通の悩みですよね。共感します。それぞれの人に肯定的な意図があるんだと思うんです。例えば私がどれだけ言っても、違う動きをする人がいる。それは自分のやり方をすることで、守りたい何かがある、叶えたい何かがある、その人なりの価値観があるんですね。


例えばものすごく速く仕事をするんだけれども、おっちょこちょいな人がいるとします。その人にとってはスピードが一番重要なんです。でもクオリティーも大事。スピードに価値観を置いているのか、正確性に価値観を置いているのか、どちらかなんですね。スピードかクオリティー、どちらが大事なのか、という議論ではなくて、状況に応じて優先順位を入れ替えることができるのがベストですが、ついつい自分の価値観、物差しで考えてしまいがちです。


そういう時は相手の方とぜひお話しをして、相手の気持ちを聞いてあげてください。それで、どうしてそういうことをしているのかなと興味を持って聞いてあげる。人間は興味を持って聞くと、どんどん気持ちが言葉となって表現されてくるんです。相手の気持ちを理解して、相手と同じ情景を描けるところまでくれば、もう100点。そうしたら、相手の人の価値観が伝わってきます。なので、相手と話をする。相手の情景に入り込めるまで相手の価値観を聞き取る。そうすると、その後は意外とポンポンッと物事が展開するのではないのかなと思います。試してみてください。



学生:指示を出す立場になるには、指示を受ける側の立場も理解していないといけないと思っています。吉田さんはどちらも経験していく中で、大変な点や、気を付けていたという点はありますか。

吉田:良いところに気が付きましたね。両方の立場を理解することは、とても大事だと思います。けれど両方の立場に気を付けていても、今自分が任された仕事に集中してしまうと、向こう側にいる人の気持ちを忘れがちになってしまう。なので、どこの立場にいても相手の人の立場に立って、もし自分がこの人だったら、自分があの人だったら何を感じるだろう?何を考えるだろう?ということを常に意識しています。

人間は360度の視界は持っていないんです。180度です。だから時々振り返ってみる。あるいは他の人に「私の後姿はどうですか?」と訊いてみる。そんなところが大事かなと思っています。完璧な人は世の中にいません。安心してください。


理系か文系かは関係ない。経営企画の厳しさと面白さ


学生:経営企画がどういう仕事かを教えてください。また理系出身者でもできる仕事ですか?

吉田さん:経営企画は字のごとく経営を企画するところです。例えば大学祭というのは大学祭実行委員会とかがありますよね。実行委員会というのはまさに大学祭を企画して運営しているところです。経営企画もまさに経営を企画しているんです。例えばリソース配分や予算の割り当て、それから今期の経営テーマやみんなで辿り着きたいゴールは何だろうかなど。それらを企画して、合意して走っていく、そういうことをしているんです。


なので、理系か文系かは関係ないですよ。私の部下にも理系がたくさんいます。ご自身が学生時代に専門的に勉強をされたことは、どんな場面でも経営企画の仕事に絶対にとても役に立つはずです。それを覚えていてください。まずは1年後、2年後、何をしたいか、自分でイメージを描いて、そこに向かってどうか突き進んでください。そして、自分が成長したらより遠くが見えますよね。成長すると絶対に視野が広がります。今まで気付かなかったことや見えなかったことが絶対にどんどん見えてくるはずです。今、見えないものも存在しているはずだということは、どうぞ覚えておいていただいて、信じたことをしていけば良いですよ。


学生:執行役に就かれてから、色々なことがあったと思います。このポジションだからこその面白さや、見えるものがあれば教えてください。

吉田さん:上の立場に就くと、自分のやることを自分で決められる、これは大きいですね。自分のゴールを自分で決められるんです。ただ、厳しいのは、自分の立てたゴールに言い訳はできないこと。そういう厳しさはあります。けれど、自分で目標を決めて、自分で施策も決めてやれるというのは自由度がものすごくある。やる気が湧いてきますよね。本当にそれが役員になって良かったと思うところです。


その他にも、例えば今、経済環境はものすごいスピードで動いていますよね。そんな中で色々な情報が役員には集中します。こんなことを言っても良いのかは分からないんですが、機密度の高い話も役員にはきちんと入ってきます。情報を手に入れることができるのは、役員にならないと無理です。コンフィデンシャリティがあるので、みんなに話すことができないことはたくさんあるんです。組織というのはそういうものです。でも私はアクセスできる。そんなところもやりがいかな、と思うところですね。


学生:関わる人数が多くなればなるほど予定どおりいかないことがあると思います。上の立場の方として計画を立てる時に気を付けていることとかはありますか?

吉田:責任の所在を曖昧にしないということかしら。誰が責任と権限を持つのかを曖昧にしないということが、プロジェクト成功の秘訣だと思います。そしてみんなで協力する。困っている人は助けるということも大切です。



学生:新卒経営企画を募集している会社がいくつかあります。飛び込むか色々な部を見てからの方が良いのか悩んでいます。どう思いますか?

吉田さん:迷いますよね。私でもきっと迷うと思います。経営企画というのは全体が見渡せる、とても良い職場だと思っています。経営企画は指示を出す職場。それ以外の営業、製造、研究の現場に近い、現場の仕事というのは指示や方針を受ける立場です。まず方針を出す立場に行きたいのか、方針を受け取る立場にいたいのか、どちらなのかなということですね。


入社して1年目、2年目をイメージしてください。自分はどちらをやりたいんだろうかと。永久にそれをやり続けることは絶対にないです。なので、1年目や2年目ではどちらがやりたいかなと、自分の感覚に正直になって選べば良いと思いますよ。


学生:理想とされているリーダー像だったり、人の上に立つ際に目標にされている姿みたいなものがあれば教えてください。

吉田さん:私は潔い人がずっと好きなんです。やると決めたらやる。それで、失敗したら謝る。やると決めて走っていても途中で色々な苦労があります。苦労をして音を上げたくなっても、音を上げたいと言いながらも音を上げない、本当にやると決めたらやる、そういうリーダーシップがずっと好きですね。


それに加えてTEDという世界中の色々な方の講演が聴ける番組に出ている、サイモン・シネックさんという方が「A boss has the title. A leader has the people.」とツイートしていたんです。リーダーシップというのは、本当にみんなが共感する目標を掲げると、役職なんか関係なく人の気持ちが付いてくるということを言いたかったのだと思います。


だから私も今は目標を掲げて「私は吉田さんに付いていっちゃおう」とか「吉田さんと一緒に働いちゃおうかな」と思ってもらえるような、そういうリーダーシップを目指しています。


学生:最後に、個人としての目標はありますか?

吉田さん:経理にいた時のことです。私はまだ課長か部長で、隣の部署にいた女性が本当に何気なく私に「吉田さんがいてくれるから私は頑張れるんですよ」とコピー機の傍で言ってくれたんです。それで私、思わず涙が出そうになってね。私、この会社で頑張ってきて良かったかもと思えて、本当に嬉しかったんです。それから彼女は結婚して、出産して、今また戻ってきてくれています。もしかしたら彼女は私にそういうことを言ったと覚えていないかもしれない。覚えていないけれど、私は彼女が元気に働いているのを見ると、本当に嬉しいんです。


そういう積み重ねで、私の個人的な目標は、今日こうやってお話ししている皆さんたちが社会で活躍していってくれて、10年後、20年後、30年後に日本、世界を背負って立つようなお仕事をして貢献していってくれること。そういうみなさんに間接的に貢献しているのが嬉しいんです。だから私はこういう貢献を続けていきたい。もっともっとやっていきたい。だからみんな頑張ってね。応援しています。

一般社団法人理系女子未来創造プロジェクト

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