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北九州市洋上風力キャンプ×SDGs 大学向け洋上風力発電研修に参加してきました

8/27~9/1に北九州市で、全国の大学生・大学院生を対象にした洋上風力発電に関する研修が実施されました。研修では、産学官様々な業種の方から貴重な講義を受けたり、浮体式洋上風力発電機「ひびき」を船上から見学したりと、洋上風力発電に興味がある学生にとって非常に魅力的なプログラムを受けることができます。さらに今年は、10月に北九州で開催された「Global Offshore Wind Summit-Japan 2023(GOWSJ)」に参加し、研修で得た成果を発表する機会もありました。
この記事では、大学1年生の私が研修とGOWSJに参加してどのような体験をしたのかレポートします。


自己紹介

まず簡単に自己紹介と、洋上風力発電に興味を持ったきっかけを話したいと思います。


私はこの春、九州大学に入学し、浮体式洋上風力発電機の浮体設計を学ぶことができる船舶海洋工学科に所属しています。


私が浮体式洋上風力発電を知ったきっかけは、中学1年生の春休み(2018年)に読んだ新聞記事でした。長崎県五島市沖の浮体式洋上風車の商用化計画が取り上げられ、スパー型の「はえんかぜ」が海に浮く様子が掲載されていました。写真だけでは「なぜ風車が倒れることなく浮かぶのか」が理解できませんでしたが、感動と憧れを抱いたことを鮮明に記憶しています。


その後、「グローバルウィンドデイ2018in北九州」に参加し、北九州市若松区の風力発電施設を見学する機会に恵まれました。北九州市港湾局の方より大阪港から曳航されたばかりのバージ型浮体が港に係留中であると聞き、実証機「ひびき」の存在を知りました。


「ひびき」は2枚翼で日本初のバージ型を採用したユニークな風車で、私には何もかもが新鮮でした。どうして過酷な気象条件下でも巨大な風車は倒れたり沈没したりしないのか、機械が故障せず安定的に送電できる仕組みはどうなっているのかなど、様々な疑問が頭に浮かび、自分なりに解明してみたい、その謎に迫るのは面白そうだと考えるようになりました。


以降、バージ型浮体に開けられた穴(ムーンプール)が浮体の動揺や復原力、波浪中の応答にどう影響を与えるかという内容で、5年間探究活動を続けました。そのため、私にとって「ひびき」は研究テーマとして特に思い入れのある風車です。


応募から選考まで

数ある研修やセミナーの中からこの研修を選んだ理由は、6日間という比較的長い日程で多面的に洋上風力を学べること、全国から集まった学生とグループワークを通して交流できることでした。


募集は、学部を問わず全国の大学生、大学院生を対象にしています。応募には、志望動機などを記入する「エントリーシート」と、指導教員からの「推薦状」の提出が必要です。その後書類を基に選考が行われ、約30人の研修生が選ばれます。
 
「学部問わず」というところからも分かるように、洋上風力は文理様々な分野が絡んでいると思っています。理系でも文系の知識が求められることがあり、理系分野だと思われがちな洋上風力に文系学生も十分に関わることができます。今回の研修では、理工系の学生が多かったですが一部文系学生もいました。また、私は最年少で参加しましたが、あまり学年差を感じることなく楽しく受けることができました。もちろん女子学生もたくさんいます。学年や学部は関係なく、洋上風力に興味があれば誰でも参加できる研修です。


研修の内容

2023年8月27日~9月1日(5泊6日)の日程で、北九州市主催「北九州洋上風力キャンプ×SDGs 大学向け洋上風力発電研修」が開催され参加しました。


全国の大学より研修生(6グループ、計29名、学部1年生~博士課程2年生まで)が選抜され、所属大学は東北・関東・東海・九州と幅広く、洋上風力に興味を持ち始めた方からゼミや卒業研究を通じて洋上風力発電を専門に学ぶ学生まで集まる多様な構成でした。


これは実に魅力的で、予想外の質問は研究のヒントや新たな着眼点になり、飛び交う会話も私は大変勉強になりました。このキャンプは昨年度にスタートしたのですが、第2回の今年はコロナ対策が緩和され、プログラムを増やして実施されました。

・産学官の多方面で活躍される第一線の先生方から計8講義を受講
・北九州市若松区周辺で風力発電事業に携わる会社へ企業訪問
・浮体式バージ型実証機「ひびき」の船上見学
・グループワークとその成果報告会

浮体式バージ型実証機「ひびき」船上見学


このように、個人では滅多に受けられない講義や企業見学など盛り沢山で、手厚くて充実した研修でした。ここではグループワークについてご紹介させていただきます。


グループワーク(4~5名ずつ、計6グループ)では、「占用公募制度の運用指針」で事業の評価対象となっている内容より抽出した以下6テーマが設定され、連日話し合いました。

① 事業の資金計画・収支計画
② 維持管理計画・リスクの特定及び分析
③ 電力安定供給(サプライチェーン)
④ 周辺航路、漁業との協調、共生
⑤ 地域経済の波及効果
⑥ 国内経済への波及効果


グループ毎にテーマをスライドにまとめ、研修最終日の成果報告会にて講師の先生方や関係者の方々へプレゼンテーションしました。報告会では多くの有益なアドバイスをいただき、また他グループの発表も学びがたくさんありました。
研修終了後、報告会での助言を基にブラッシュアップした内容でポスターを作成し、10月11日~13日に北九州で開催されたJWPA・GWEC主催「GOWS-J2023」のセッション会場にてスライド発表が行われました。


私は「⑤ 地域経済の波及効果」を選択し、メンバーと活発に話し合いました。同じ志を持つ者同士は理解が早く、時間も流れゆく感覚でした。年少者の私にとって先輩方の進行は本当に為になることばかりで刺激的でした。これは全体に言えることですが、どの研修生も分け隔てが無く、終始穏やかな雰囲気に包まれていたことが素敵だなと感じました。

また、研修期間は朝から目一杯のスケジュールで、学生でもさすがに疲れが出るのですが、連日グループ間を回りながら、熱心に学生の意見に傾聴され助言くださる先生方の姿には、非常に胸を打たれました。

グループワークの様子


先生に質問する研修生


それから、この研修を通して個人的な改善点も見つかりました。元々理系視点から興味を持ち始めた私は文系知識や思考に乏しく、課題に苦戦しました。先生方と意見交換を繰返すことでぐっと視野を広げられましたが、知識不足を痛感する場でもありました。理系思考だけでは、洋上風力発電に関する様々な課題に向き合えきれない危険性を孕みます。


このような文理融合型の研修に参加すれば、必然的に弱い領域に接することができると実感しました。このような機会を作ってくださった北九州市環境局の方には大変感謝しています。今後も積極的に自ら飛び込んでいこうと思います。
 
このほか、研修修了後「洋上風力キャンプネットワークKanper」が設けられ、現在も研修生同士の交流が続いています。Kanperには大学の先生方も参加されており、関連イベントの紹介など情報共有や意見交換も可能です。学生にとってこのネットワークは大変有難いシステムで重宝しています。

最後に余談ですが、研修外の学生間交流も盛んで、北九州の地元グルメ(もつ鍋、鉄なべ餃子など)を連日堪能したのは良い思い出です。本当に美味しくて、頑張った後は正に格別でした。食事をとりながら聞く他大学や専門分野の話は興味深く進路の参考になりました。これもキャンプの醍醐味でした。

もつ鍋


鉄なべ餃子


GOWS-J2023への参加

 北九州洋上風力キャンプの成果報告のため、2年ぶりに北九州市で開催されたGOWS-J2023に参加しました。
研修生15人がGOWS-J2023に参加し、ミニセッション会場にてテーマごと6グループが発表しました。会場は満席で立見が出る時間もあり、オーディエンスの多さに驚くと共に、企業、団体、大学より業界に精通する方々がお越しくださり、研修中の成果報告会とは違った緊張感漂う発表となりました。
いただいた質問はどれも学生の発想にない鋭く新しい視点を得るもので、中には企業も課題意識がある話題について「学生目線でどう考えるか教えて欲しい」というものもあり、直接意見交換させていただける最高の機会でした。学生にこのような場をご準備いただき、大変感謝しています。

GOWS-J2023 ミニセッション会場

他には、GOWS-J2023では基調講演を聴講したり、展示ブースを見学したりと、最新の技術開発を見て回りました。特にノルウェー大使館やドイツ企業が集まるブースを訪ねた際、学生であると説明すると、非常に面白く熱心に企業の取り組みを説明くださりました。私はまだ日本で実際に目にしたことはありませんが、垂直軸風車、モノパイル用掘削機、洋上風車用航空灯など、これらが近い将来、日本の海洋で稼働する様子を想像することができました。
 
さらに、11日夜に開かれた産学交流会にも参加しました。企業や大学、JWPAの方々と軽食をとりながら、どこかアットホームで和やかな会でした。高校時代から常々感じていることですが、洋上風力に携わる方が日本の風力の未来や仕事を語るとき、楽しそうで生き生きとした感覚がストレートに伝わってきます。上手く表現できませんが、お話を伺う度にその熱い感覚を受け取って、私自身も夢が膨らむというか、そこが、洋上風力を魅力的に感じる一因かと思います。

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